*たわごとコラム

たまには古本屋的お話でも・・・その2

版によって違いあることを知ると、
『じゃあ、どの版が一番いいの?』と
思ってしまうかもしれませんが、こればっかりは一概には言えません。
好みの問題もありますしね。

市場では、初版に付加価値が付くというのが常識ですけれど、
何度も改訂を繰り返しているタイトルは
カバーデザインによって、人気度が違ったりすることもあります。

例えば絵本の場合、“原画の色に近い”という意味では、
古い版よりも印刷製本技術が進歩した
新しい版の方が優位かも知れません。
けれども、ことはそんなに単純ではなく、
原画そのものが経年による劣化を起していることがあります。
それどころかすでに消失してしまっていることさえあるのです。
となると、劣化のない原画から版を制作した古い本の方が、
“原画の色に近い”場合もあるわけです。

まあ、そういうことを論ずる以前に、
同じ作品の全ての版を見比べることなど、
滅多にできることではありません。
結局、古本との出会いは一期一会。
出会えた本が、自分にとって縁のあった本だと、私は思っています。

こんなちっぽけな古本屋でも、出会える本が少しだけ多くなるので、
前述のコラムのような、“違った版を見比べる”
という機会がたま〜に巡ってきます。
どちらがよりいいか、ということよりも、
その違いそのものがとても興味深く感じられるのです。
そこには、時代の流れや、その国の出版事情や、
携わった人たちの思いが表われています。

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