*たわごとコラム

オーブンと鉄ゲタ

「イラストやデザインに興味を持ち始めた子供に何を与えてあげればよいか」
友人からそんなメールが届いたことが切っ掛けで、店主Bと、自分たちが子供だった頃はどうだったかという話になりました。

私の場合・・・
小学生の頃、“お料理しましょう”という子供向け料理本の影響で、すっかり料理にはまっていました。はじめは、家にある道具だけで作れるレシピを選んでいたのですが、だんだん興味が広がって、ある日「オーブンを買ってほしい」と母に頼みました。
おもちゃだとか、雑貨だとか、そんなものはどんなにねだってもなかなか買ってもらえませんでしたが、その時に限っては「今すぐに買いにいこう」とその日のうちに電気屋さんに連れていってもらったことを、今でもはっきりと覚えています。
その時の事は、私のその後の生き方にいろいろな意味で影響し続けていて、何かにつけて思い出すのです。例えば、選択の仕方、決断の仕方、行動の仕方・・・で迷った時とかに。

と・・・そんな話を店主Bにしたところ、「なんかいいな〜、それ。うらやましい話だな〜。オレなんか、すぐに思い出せることがないな〜」と宙を見つめていました。
が・・・突然、
「そういえば、オレが拳法を習い始めたころ、おやじが突然鉄ゲタ買ってきてさ・・・これ履いて走れっていわれたことがあったよ。笑えるよね〜」

「鉄ゲタなんて本当に商品として売ってるの〜〜??」
そんなものはマンガの世界の事だとばっかり思っていたので、
思わず聞き返してしまった私。

「売ってるよ〜、実際それで走ったしさ〜」

「へ〜〜〜〜」

「それからさ〜 鉄の棒の両端にコンクリートつけて、バーベル作ってくれたよ」

「へ〜〜〜〜、なんかお父さん、“巨人の星”に出てきた星 一徹みたいだね」

「たぶんおやじも影響受けてたんだと思うんだよね〜〜、鉄ゲタもバーベルも、欲しいって言った覚えはないんだけどさ〜」

よく話を聞いてみると、当時はあんまり嬉しくなかったようですが、そのお陰で体力がついたのかもしれないし、結果的にはよかったんじゃないかということで、思い出話を締めくくりました。

まあどっちにしても、私は今“料理の達人”ではないし、店主Bは“星 飛馬”でも“ブルース・リー”でもありません。オーブンも鉄ゲタも、親が思った程の効果は生まなかったような気もしますが、でもこうして今でも思い出すということは、きっと何かを与え続けてくれているのだと思います。

それにしたも鉄ゲタ・・・一度この目で見てみたい。

PADE TOP