*たわごとコラム

身体が自然に動いて絵を描く

「・・・描く時はまず紙を汚すことから始めます。
そうすると頭ではなく身体が自然に動いて、誘導してくれるんです。
描いているうちに色も誘導してくれる。その時に思います。脳みそに勝った!と」

新井良二さんがインタビューに答えてそういっていました。

頭ではなく身体が自然に動いて絵を描く・・・
ある時期までの子どもはみんなそうだけれど、
いつの間にやら“頭”が口を挟んでくるようになって、
ともすると「私は絵なんか描けない」なんていい始めたりします。
丸を一つ描いたって、絵は絵なのにね。

大人になると、“頭”を黙らせるのは相当難しいことなのですね。
だからこそ、それができる人の絵は人を魅了するのかもしれません。
確かにそういう作品は、理屈抜きに迫りくるものがあります。

例えば、80歳から絵を描き始めたアボリジニのエミリー・ウングワレーや、
アクション・ペインティングの産みの親、ジャクソン・ポロックの絵。
この方たちの場合は、そうしようとしてそうなるのではなく、
そのようにしかできない描き手でした。

ところで、 新井良二さんの脳みそに勝ったのは、いったいなんなのでしょう?
エミリー・ウングワレーや ジャクソン・ポロックの手を動かし、
描かせるものはいったい?

見ようとすると見えなくなり、考えると消えてしまうものにアクセスして
生まれてくるものは、何?

エミリー・ウングワレーはそれを、「すべてのもの」といいました。

愚かな問いを繰り返すだけの凡人には、到底たどり着けない領域です。

PADE TOP