*たわごとコラム
青を求めて・・・その8
グアムから帰って数年後、グラン・ブルーという映画が公開されました。
リュック・ベッソン監督が、実在の世界的なフリー・ダイバー、
ジャック・マイヨールをモデルに描いた“海とイルカに魅せられたダイバーの物語”です。
ネタバレになるといけないので詳細は割愛しますが、
主人公のジャック・マイヨール はとにかく陸にいるよりも、
海に潜っていた方が生きやすいのではないかというような海人です。
ラストシーンは、そのジャックが、イルカに導かれるように、
深海で命綱から手を離し、海に還ってゆく・・・というもの。
上段でリンクした映画の紹介文の中では、
「どこか胎内回帰を思わせる」と記されています。
このラストシーンを見ながら、私はグアムのブルーホールで体験した
あの不思議な感覚を思い出していました。
青い光の中、呼吸するのも忘れるくらいに穏やかな気持ちで
海底に静かに沈んでいく、あの感じ・・・
そして、死にゆくとき、あるいは、生まれくるときも、
もしかするとそんなふうに次元を移行するのではないかと思ったのです。
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実際のジャック・マイヨールもきっと、最期はこの映画のように
海に還っていくのだろうと思わせるほど、海を愛した人でしたが、
2001年の暮れ、耳を疑うような訃報が世界を駆け巡りました。
いつか、世界中の水族館などで飼われていたイルカをひきとって、
擁護施設を作りたい。-----そんなことを言っていた彼が何故?
訃報を聞いて彼の元に駆けつけたある日本人の男性は、
その場の孤独な空気に胸がつぶされそうだったと言っていました。
晩年のジャック・マイヨールを思うとき、
牧水の歌がイメージとなって頭の中に浮かんできます。
白鳥は かなしからずや 空の青 海の青にも 染まずただよふ
この歌をあえて、言葉の通りにイメージしてみると、
自ら死を選んだジャック・マイヨールが“白い鳥”に重なります。
なぜそんなところを漂っているの?
あなたは本来、鳥じゃなくて魚でしょう?
海に還るべき。
海でしか、生きられない人なのだから・・・
それとも彼は、 常に酸素を必要とする重たい身体を脱ぎすてて、
海の深みへと還っていたのでしょうか。