*たわごとコラム

覚悟

以前このコラムでご紹介した、“猛犬注意”の犬の飼い主さんが、
昨日、クロッキーの散歩で家の前の道を通りかかった時にちょうど表にいらっしゃって、
声をかけてくださいました。

「クロちゃん、何歳になったの?」

「もうすぐ17歳です。」

「そお~、うちもね、小さな犬を家の中で飼っていたんだけれど、 
  ついこの間17歳で亡くなったばかりなの。 」

飼い主さんはそういって、目頭を押さえました。

「ごめんなさいね、思い出すとすぐに涙が出てきちゃって。
 娘なんて一週間も泣きっぱなしで、ご飯もろくに食べないのよ。」

その悲しみは、私も何度か経験したことがあります。
だから、思い出すだけで涙が出てしまう気持ちも、とてもよく分かります。

クロッキーも、17歳。
一緒に過ごせる時間は、もうそんなに長くはありません。
その日のことを思わない日はないし、だからこそ今が愛おしいのです。
そう思うと、今からでも涙が出てきてしまいます。

悲しみの深さは、その子への愛情と、その子からもらった喜びの大きさに比例します。
だから、思い出すだけで涙が出るのは、共に過ごした日々が
とてもとても幸せだったということですね。

亡くなったわんちゃんも、さぞかし幸せだったことでしょう。

『こんなに悲しい思いをするのはもういやだ、だから二度と動物は飼わない。』
と、以前の私はそう考えていました。
店主Bがクロッキーを拾ってきた時も、はじめは里親になってくれる人を捜すつもりでした。

けれども今は、覚悟ができています。
悲しみを避けようとすれば、喜びも失うのだということに気づいたのです。
その悲しみも受け入れるということ、それが本当に家族として愛することなのだと、
他でもない、クロッキーが教えてくれました。

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