*たわごとコラム
クロッキーが教えてくれたこと・・・その6
どんな動物でもそうなのかもしれませんが、クロッキーはとにかく病院が大嫌いで
診察台の上にのせられると、いつもカチコチになって震えていました。
晩年のクロッキーを診ていただいていたのは、プリモスという動物病院の女性獣医さんで、
それはそれは優しい先生なのですが、状況はあまり変わりませんでした。
けれども私たちはその先生に出会えたことを、とても幸運だったと感じています。
先生はとにかく動物によく語りかける方で、
それが胸からの言葉であることがとてもよく分かりました。
クロッキーが亡くなる2週間程に訪れた時のことです。
クロッキーはもう、立ち上がることもお座りすることも出来なくなっていて、
診察台の上に横たえるしかありませんでした。
その傍らに先生はかがみ込んで、クロッキーの両手を握り、腕をさすりながら、
耳元に顔を近づけて語りかけてくれました。
「クロッキー、今までは、食べちゃいけないものもたくさんあったけど、
もう何でも食べていいんだよ。
いっぱいわがままいってごらん。
何か美味しいものがたくさん出てくるかもしれないよ。」
その時です、クロッキーは初めて診察台の上でしっぽを振りました。
とても弱々しい振り方でしたが、はっきりと分かりました。
先生の言葉が、クロッキーにしっかりと伝わったのだと思います。
先生は私たちに話しをしている間もずっと、
クロッキーの腕をさすり続けていてくれました。
クロッキーが亡くなった時は、一緒に泣いてもくれました。
見送った子は、過去にもたくさんいるはずなのに・・・
そんな獣医さんとの出会いも、クロッキーの置土産です。
ところで、大の病院嫌いといえば、店主Bもクロッキーには負けません。
出来る限りお世話になりたくないと思っているようです。
そんな店主Bが言いました。
「自分がもし病気になったら、プリモスの先生に診てもらいたいなぁ~」
その意向を先生に伝えたところ、人間は獣医が診察できない唯一の動物なのだと
やんわり断られました。(当然ですけど・・・苦笑)
実は私も店主Bと同じ気持ちなので、
「それでは、来るときは着ぐるみを来てきますね」と
押しを入れておきました。(笑)
人間の世界には意味のない言葉が溢れているので、
どこかで私たちも、胸からの言葉を切望しているのかもしれません。