*たわごとコラム

おいしさの素

西荻窪に完全無添加にこだわる“リスドォル・ミツ”というパン屋さんがあります。
私も、何度か足を運びました。

とにかくその“こだわり方”が半端じゃない。

店主自ら、オーガニックのバニラビーンズ を仕入れるためにわざわざフィジーに飛んだり、
毎週山に天然水を汲みに行ったり・・・
他の材料もしかり、一切妥協がありません。

その店主さんは、パンの生地にオペラを歌って聴かせます。
そうすると、発酵がよく進むのだそうです。
最初その様子を観たときにはびっくりしましたが、
人生をかけてパン作りをしている店主さんがそういうのですから、事実なのだと思います。

クラシックや 環境音楽が、作物や酵母の発育を促すというのはよく聞く話。

「だけど、 リスドォル・ミツの場合は、それだけじゃないと思うよ」と店主B。
「あの店主がみずから歌って聞かせるからいいパンができるんだと思う。
店主の愛情や情熱がパンに伝わるんだよ」

「なるほど。確かに」

そういえば、いつだったかある小さなレストランのオーナーが、
「ケンカ中だったり、イライラしてる時には、鍋の前に立つな」
とスタッフたちに言っていたことがありました。
そんなものはお客さんに出せないと。

それから・・・インドのある施設を訪ねた時のこと。

その施設では、どんな人にでも無償で食事を振る舞うのですが、
世界中から集まってきたボランティアのスタップたちが、
出来上がった料理の一品一品に祈りを込めているのが印象的でした。

そもそも、『おいしいものを食べさせたい』と思う気持ちそのものが、
おいしさの素であるということ。

何かを食べるとき私たちは、
作り手の気持ちも一緒にいただいているんですね。

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