*たわごとコラム

紫陽花

今、西側の窓から見えるあじさいは満開。
梅雨空にそこだけ光が射したようで、
ついついぼんやりと外を眺めている時間が増えてしまいます。

なぜだか、しとしと雨が降る日の方が美しく見えるのは気のせいでしょうか。

100625.jpg

「紫陽花」とはいったい誰が名付けた名前なのでしょう。
そしてなぜ、「あじさい」と読むのでしょう。
ちょっと気になって調べてみました。

和名の「あじさい」は、集(あづ)・真藍(さあい)が変化したもの。
真藍(さあい)は青いという意味です。
つまり、アジサイは「青の集まり」という意味で、その花姿から命名されたんですね。

「紫陽花」という漢名は、どうやら当て字のようです。
しかも、『 アジサイに漢名をあてはめる必要に迫られたとき、唐の詩人白楽天(白居易)の詩の中から日本のアジサイとは全く別植物の「紫陽花」を持ち出してきた。以来、アジサイは「紫陽花」となった』とのこと。
本来「紫陽花」は『中国の招賢寺という寺にあった名の知れぬ山樹に咲く花で、色は紫、芳香を放つ仙界の麗花であった』と言われているそうです。

紫陽花詩    白楽天(白居易)
 何年植向仙壇上  何れの年にか植えて仙壇の上に向う
 早晩移栽到梵家  早晩移栽して梵家に到る
 雖在人間人不識  人間(じんかん)に在るといえども人識らず
 与君名作紫陽花  君がため名づけて紫陽花となさむ

この詩には白居易の自註が付されているそうです。
 招賢寺有山花一樹、無人知名。色紫気香、芳麗可愛、頗類仙物。因以紫陽花名之。
 招賢寺に山花一樹あり、名を知る人なし。色紫にして気香しく、芳麗にして愛すべく、
  頗る仙物に類す。よって紫陽花を以てこれを名づく

つまり「紫陽花」は、詩人が人知れず咲く花に即興で名付けたものだったんですね。
あじさいの花のイメージにぴったりの漢字名だと思っていたので、ちょっと意外でした。

とすると、 中国の招賢寺に咲くという本物の紫陽花とは
いったいどんな花なのか気になりますね。
「色紫にして気香しく」とありますが、あじさいに香りはありません。
後の人々の予想ではライラックが有力候補のようですが、想像の域を出ないようです。

けれどももし、 白楽天(白居易)さんが日本のあじさいを見たら、
やっぱり紫陽花と名付けるのではないか、という気がするのですが、どうでしょう?

PADE TOP