*たわごとコラム

書庫で発掘したもの

真夏が終わって急に冬になったような陽気・・・
体がちゃんと順応していないらしくて、いまいちシャキッとしません。

今週に入ってから少しずつ元気が出てきて、
猛暑の間『無理っ!』と思っていたあれやこれやを、少しずつやり始めています。

その一つが書庫の大改造。
書庫というと大げさですが、プレシャス・ブックスの在庫や、
仕事の資料、作品、アルバムなどなどをまとめてストックしてある部屋があって、
その部屋の書棚を10月中に総入れ替えしようという計画を立てているのです。

とにかく、下準備として本の整理を始めました。

この部屋にあるものは全て、自分で持ち込んだもののはずなのに、
どういうわけか、久しぶりに再会して懐かしい気持ちになるようなものがあったります。

昔の写真とか、ずっと開かずにいた本とか・・・
そういうものを手にする度に、作業が一時中断。

まあ、書庫の整理をする時はいつもこうなんですけどね。

で、今回はこんなものを発掘しました。

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昔々、確かドイツの蚤の市で買ったものです。

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多分、スラヴ系の言語だと思うのですが、何が書いてあるのかは
さっぱり分かりません。
日付は記されていないので、日記ではなさそうです。

全てのページに、手描きのイラストやコラージュが施されていて、
第一印象は、まさに“手作りの本”。

作者は多分若い女性、とても魅力的な作品ですが、素人です。
コラージュに使われている切り抜きから推測すると、
1960年~70年代に作られたものではないかと思います。

このノートには“本を作ること、編集すること”へのワクワク感が
ぎっしり詰まっています。
なぜ蚤の市にあったのか、その経緯については知る由もありませんが
これを手にした時、作者のワクワク感が一気に伝わってきたのです。

作者は、今頃どこかの出版社で制作に関わる仕事をしているかもしれません。
もしかすると私は現時点で、彼女が制作したその本を持っているかもしれません。

そう思うと、ワクワク感がさらに広がります。

それにしてもこのノートは、古いものなのに何とも生き生きしています。
蚤の市で売られ、今は海を渡って日本にある・・・
ずーっと生き延びてきた理由は、多分そこにあるのでしょう。

中秋の名月

急に涼しくなりましたね。

暖かくなって冬眠からさめたモグラみたいに、
先週はあれこれ動き回りました。
その前の週までは、あまりにも暑くて外出の予定を先延ばしていたのです。

こんなに突然気温が下がるなんて・・・
今年の秋は短そうです。

9月22日は中秋の名月でした。
駆け足で行ってしまいそうな秋を惜しんで、
夕方、まだ明るいうちから月を眺めていました。

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我が家の家宝

フィルム・カメラだった頃は、
スナップ写真といえども、今程気軽にシャッターを押すことはできませんでした。
なにせフィルム一本で撮影できる写真の枚数は、多くても36枚。
アルバムに並ぶのは、冠婚葬祭とか旅行とか、何かの記念日とか、
とにかく“特別な時”に撮影した写真がほとんどです。

デジタル・カメラの時代になってからは、枚数規制のたがが外れて
何にでも気軽にカメラを向けられるようになりました。
今では毎日のように、他愛のないものをあれこれ撮影しています。
被写体は種々雑多でとりとめがないのですが、
我が家の場合、特に多いのは犬、空、道ばたでみつけたもの・・・そして、食べ物。

食べ物を撮っているのはほとんどが店主Bで、
日々の食卓から外食した時の料理、飲んだお酒のラベルに至るまで、
とにかくこまめに記録しています。

特に “日々の食卓” に関しては、10年以上もの間ほぼ毎日毎食、
しかも、目玉焼きやお漬け物みたいなありきたりなメニューも外さず撮っているので、
すでにものすごい枚数になっています。

本人曰く、なんでそんなことを始めたのか、
今となっては動機すらも思い出せないとのこと。
目的があるわけでもなく、いつからかそれが習慣になってしまって、
毎回何も考えずにシャッターを切っているのだそうです。

専用ソフトで撮りためた写真をスルスル一覧できるようになると、
最初に目にとまるのは、やっぱり大きなイベントの時に撮影した写真です。
“日々の食卓” なんて、たくさんありすぎて、しかも毎日食べている普通のごはんだし、
一覧表示すると、不思議な模様の壁紙みたいに見えます。
一枚ずつよく見たって、それがいつのごはんだったのかも思い出せません。

だけど、たくさんの写真を流し見しているうちに、じわじわと気持ちが動き始めました。
「こんなにたくさん食べてきたんだな」
「今まで、こんなにいろんなものをつくってきたんだな」
「ずっとずっと続けてきたんだな」
これが“当たり前”のことだなんて・・・なんて恵まれているのだろう。

もしかするとこの写真は、我が家の“家宝”かもしれない・・・

少し前まで、不思議な模様の壁紙にしか見えなかった写真たちが、
急にかけがえのないものに思えてきました。

こんな写真、フォルム・カメラの時代には、決して撮ろうとは思わなかったはず。
まさにデジタル時代ならでは恩恵です。

今日もまた“家宝”が何枚か増えました。
例えお茶漬け一杯でも、家宝です。

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9月なのに海は真っ青、真夏色

海の家は8月31日でおしまい。
早々に解体作業が始まって、すでに跡形もありません。
ところが、今日もかんかん照りの猛暑で、海は真っ青、真夏色。
夏休み中ほどではないにしろ、たくさんの海水浴客で賑わっています。

毎年、8月20日頃を過ぎると、何となく海の色も落ち着いてきて、
夕方の風には秋の気配さえ感じる日もあるのに、
今年は延々と“真夏”が続いています。

ニュースによれば、
「今年の夏は、観測史上一番暑かった。8月中の静岡の真夏日は29日」
なんでもかんでも“地球温暖化”に結びつけてしまうことを慎む向きもある昨今ですが、
今年の夏の暑さについては気象庁もはっきりと、
「地球温暖化による異常気象」と公言しています。

以前、東京やその近郊の町中に住んでいた頃には、
報道からの知識として「異常気象」を感じていた部分が、
自分の中にあったような気がします。
つまり、「実感」や「体感」が薄かった。
だから逆に、どんなことでも「異常気象」に
結びつけて考えてしまうようなところがありました。

けれども、こちらに引っ越してきてからは、それを肌で感じるようになりました。
自然を相手に日々仕事をしている方たちは、もっとはっきりと感じているに違いありません。

自然は時に優しく、時に怖い。
極端に変化することもあって、それを「異常」とは言い切れない。

でも、今年の夏は不安を感じずにはいられません。
「やっぱり、なにかが・・・」

今日も、真夏色の海を見ながらそう思いました。

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