*たわごとコラム

売り上げでもバクシーシでもないもの。

【エジプトのおはなし その4】

物売りの少年にまつわる思い出をもう一つだけ。

エジプトを南下する列車の中での出来事です。

私たちの乗った列車は大幅に遅れていました。
全ての駅で気が遠くなるほど長時間停車して、なんのアナウンスもなく発車します。
4人がけの対面式シートに同席していた英語を話せる青年によれば、
エジプトではいつものことだということでした。

その時既に、到着予定時刻から遅れること8時間以上。
いい加減おなかがすいてきて、
駅に停車する度に乗り込んでくる物売りから何か買おうということになりました。
そんなに遅れるとは思っていなかったので、充分な食料を持参していなかったのです。

選択の余地もなく、大きなかごに市販の菓子類を入れて売りにきた少年に声をかけました。
この少年には全く英語が通じませんでしたが、
目の前に座っていた青年が通訳をしてくれました。

差し出されたかごの中から、小さなビスケットの袋を2つ選び、
お金を渡そうとすると、少年が青年を通じて「おつりがない」と言ってきました。
それは、1コインで2つ買えて、おつりがくるという値段(たとえば、1つ40円で、
100円玉を出すと20円のおつりが来るような値段)だったのですが、
細かいコインが足りず、何より、とにかくおなかがすいていたので、
青年に「だったらその値段でかまわない」と伝えました。

すると、青年が少年と何ごとかやり取りを始め、おもむろにかごの中からもう一つ
ビスケットを取り出して私たちに差し出しました。
つまり青年は、3つ買うから1コインにしろと、物売りの少年に交渉してくれたのです。

エジプトでは、日常的に行われている当たり前の駆け引きだと思います。
物売りの方も、それを前提に予め高めの値段設定をしているのかもしれません。
もちろん、青年も親切心でやってくれたことなのですが、
その時私は、なんだかその少年から
搾取をしてしまったような気持ちになっていました。
青年の様子が、ちょっと強引に見えたような気もしたのです。・・・つづく

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