*たわごとコラム

6年半旅して

いつだったか、もう随分前に旅先で出会ったHさんから、
昨日突然「6月末に帰国しました」というメールが届きました。
日本の土を踏むのは6年半ぶりだそう。

出会った場所は、旧ユーゴスラビア某国の小さなバスターミナル。

隣国から12時間以上もかけて列車でその町にたどり着いた私たちは、
さらにバスに乗り継いで最終目的地へと向かう途中でした。
ターミナルで時刻表を確認してみると、次のバスまで約3時間、しかも最終。
仕方なくターミナル内のベンチで時間をつぶすことにしたのですが、
その待ち合い場所に、日本人カップルの先客がいたのです。

「どちらへ」と訪ねると、ボスニア・ヘルツェゴビナ行きのバスを待っているとのこと。
もう何年も世界中を旅していて、 これからヨーロッパを巡るということでした。
母国から遠く離れた場所で出会った日本人同士、すぐに意気投合した私たちは、
それから旅について、日本について、人生について・・・語り合い、
気がついたらあっという間に、バスの発車時刻が近づいていました。

彼らは、携帯電話も、辞書も、ガイドブックさえも持っていませんでした。
テレビやインターネットが宿泊先で利用可能な場合のみ、
日本についての情報を少し得ることができるのだと言っていましたが、
テレビは言葉がわからないので画像を見るだけ、
インターネットも、日本語は表示できないことが多いそうです。

帰国を知らせるメールには
「家の周りの風景が変わっていてビックリした」と記されていました。
これから徐々に、6年半前と今の日本の違いを実感してゆくのでしょう。
「まるで浦島太郎ようだね」と、返信しました。

6年半前の日本て、どんな状況だったかな。
なんだかすごく変わってしまったような気がするけれど・・・
この変化を、彼らはいったいどのように感じたのか、
どんな本にも書かれていないことを学んだはずの彼らに、
いつか聞いてみたいと思っています。
離れているからこそ見えてくるものも、ありますしね。
たった2時間程度の出会いでしたが、「袖すり合うも他生の縁」といいますし、
なんとなく再会できる日が来るような気がしています。

それにしても6年半! いろんな人生があるものですね。

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