*たわごとコラム

店主Cが引退した日

今日はプレシャスブックスの店主Cが引退した日。
店主AとBだけで運用するようになって4年になります。

店主AとかBとか、何のことだかさっぱり・・・ですよね。

プレシャス・ブックスは2002年、
サイト運営担当の私、店主Aと、力仕事&発送担当の店主Bと、
そして、バックアップ担当の店主Cの、二人と一匹でスタートしました。
当時のスタッフ紹介の名残で、今も店主AとかBとかいっております。

二人と一匹・・・つまり店主Cは犬でした。
バックアップ担当というのは、未熟者の店主AとBを精神的に支える係、という意味です。

店主Cが現役だった頃は、頻繁にこのコラムに登場しました。
(私の脳裏には毎日登場しますけどね。笑)
今日、過去のコラムのデータを整理していて、この街に越してくる前の記事を見つけ、
店主Cがどんなにまわりの人たちに優しくしてもらっていたかを
あらためて思い出しました。

みなさん、どうしているでしょう。。。

店主Cに優しくてくださって、ありがとうございました。

店主Cにも心の中で言いました。
「そういう人々に出会わせてくれてありがとう。」

今日はちょっと、思い出話のかわりに過去記事を転載しちゃいます。

2004年のコラム
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昨日、何のまえぶれもなく、ある女子大生が訪ねてきました。 
「クロッキーちゃんに会いたくて・・・」 

先週、散歩の途中に駅前で出会った埼玉大学の学生で、
はじめからクロッキー(店主C)にとても優しく接してくれたのでした。
それなのに、店主Cは相変わらずの人見知り。
彼女は大学で“動物心理学”を学んでいるのだそうで、
そのせいか、一向になつかない店主Cに興味津々。
その時側にいたタコ焼き親分によると、
彼女はその後も毎日のように親分の出店に立ち寄って
「今日、クロッキーちゃんは?」って聞いていったのだそうです。

わざわざ会いに来てくれたのに、店主Cときたら、しっぽの一つもふりません。
それでも彼女は満面の笑顔で店主Cに語りかけ
「また来てもいいですか?」と言いながら帰っていきました。

店主Cは、人気のない工場地帯に捨てられていた犬です。生後三ヶ月くらいでした。
店主Bがうちにつれて帰ってきた時から、人間を見るだけでおもらししてしまうような、
極度の人間恐怖症で、最初は私たちも戸惑うばかり。
毎日のように名前を呼び、少しずつ人に触れさせ、
12年たった今ではだいぶよくなりましたが、
それでも、決して看板犬になるようなフレンドリーな犬ではありません。

友人が訪ねてきたり、散歩の途中に犬好きな人が近付いてきたりする度に、
私はいつも申し訳なく思っていました。
せっかく可愛がってくれているのに、店主Cがあまりにも無愛想だからです。
好意を持って近付いたにもかかわらず、少しもなつかなかった犬を、
その後も可愛がってくれる人がいるなんて思ってもいませんでした。

ところが!いるんですね。そんな人たちが。
店主Cの気持ちを尊重し、決して無理強いせず、
見限らず、時間をかけて仲良くなってくれる人間が!
店主Cは犬ですよ!犬!

ちなみに、店主Cは最近になってやっとタコ焼き親分に心を開き、
頭を撫でられても後ずさりすることがなくなりました。 
それどころか、自分から嬉しそうに近付いて行きます。
親分は、店主Cのために犬用の自然食クッキーを買ってくれて、
裏に書かれている説明書を熟読し、
一日にあげてもいい分量を守って、行く度に数個ずつ食べさせてくれます。
今、駅前の出店に、店主Cのキープ・クッキーがあるわけです(笑)。

店主Cを見ていると、「星の王子さま」に出てくる、キツネの言葉を思い出します。
「しんぼうが大事だよ。最初は、おれからすこしはなれて、こんなふうに、草の中にすわるんだ。おれは、あんたをちょいちょい横目でみる。あんたは、なにもいわない。それも、ことばっていうやつが、勘ちがいのもとだからだよ。一日一日とたってゆくうちにゃ、あんたは、だんだんと近いところへきて、すわれるようになるんだ……」

親分が王子さまなのか、店主Cが王子さまなのかわかりませんが、
とにかく二人は毎日のように顔を合わせて、
最初のうちは付かず離れず・・・それでもいつの間にか仲良しになったのでした。
親分が、可愛げのない犬だからと店主Cを見限っていたら、
決してこんなふうにはならなかったでしょう。

普段の店主Cは、気が付くと側にそっと佇んでいるような、そんな犬です。
例えば、Nさんがうちに来て、部屋の片隅でぼんやりと一人でお酒を飲んでいた時のこと。
(私たちは Nさんの子供たちとバーベキューで盛り上がってました)
今まで側で寝ていたのに、突然立ち上がって部屋を出て行こうとした店主Cに
「クロッキー行っちゃうのか~、さみしいな~」と声をかけると
くるっとUターンして再びNさんの側に横たわったのだそうです。
後にNさん自身が教えてくれました。

こんな店主Cを、そのまま好きになってくれる人がいることを、
私はとても嬉しく思っています。
そして、自分を飾ることを知らない店主Cが、いつの間にか人の心の中に入って行き、
意図することもなくその人たちを笑顔にしているという事実に、
少なからず感動しています。

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