*たわごとコラム

自分で選ぶという経験

子供の頃に大好きだった本は何冊も記憶にあるのですが、
手元にはほとんど残っていません。
何度も引っ越しを繰り返してきたので、
いつ、どうして手放したのかという記憶は曖昧です。
飽きもせず繰り返し眺めていた洋書絵本や名作絵本は、
みんなどこかへ行ってしまいました。
そう、今となってはまさしく「みんなどこかへ行ってしまった」という感じ。

逆に考えると、残っている数冊は何故手放さなかったのか・・・

これまでの人生の中で、何度も何度も持ち物の取捨選択の機会があったにもかかわらず
その度に「これはとっておこう」と決めてきた本たち。

それは、宇宙と地球のこども図鑑と、「お料理しましょう」のシリーズ・・・
他は、お気に入りの童話と詩集が少し。

今まであまりその理由を考えたことがなかったのですが、
残っている本たちを久しぶりに開いてみたら、少しずつ当時の記憶が甦ってきました。

これらの本たちは、自分で見つけてきて、
どうしても欲しいとねだって手に入れたものだったこと。
本屋さんに取り寄せをお願いして、指折り数えて到着を待った本たちでした。

いろんなタイトルがあるのに、なぜか宇宙と地球だけを買ってもらったこども図鑑は、
何度も学校の自由研究や宿題に使いました。
「お料理しましょう」は、ページをめくりながら「今度は何を作ろう・・」
とワクワクしながら眺めて、実際にいくつも料理を作りました。
だから、どちらの本もシミだらけでボロボロです。

親が与えてくれたり、誰かにプレゼントしてもらったものでも、
大好きだった本はたくさんあったのですが、何故かそれらは残っていません。

もちろん、どちらも記憶の中では宝物なのですが、思い入れの深さが全く異なります。

そう考えると、子供には推薦図書などを”与える”よりも、
なるべく偏りなくたくさんの本と出会わせてあげて、
その中でその子が”これっ!”と選んだ本を側に置いてあげるほうが、
いいのではないかと思えてきます。

自分で”これっ!”と選んだ感覚そのものが、
大切な経験になってゆくのではないでしょうか。
与えられてばかりいると、いつかその感覚がにぶってしまって、
自分が本当は何が好きなのかが分からなくなってしまうかも知れません。

PADE TOP