C O L U M N
“たわごと”コラム
 
2002〜2003
NO.9〜 NO.13
NO.14〜 NO.23
NO.24 〜 NO.34
NO.35 〜NO.49
NO.50 〜 NO.57
NO.58 〜 NO.72
NO.73 〜 NO.91
NO.92 〜 NO.114
NO.115 〜 NO.139
NO.140 〜 NO.154
2004〜2005



絵本についてのつれづれ
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洋古書探訪
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旅先で出会った絵本たち展
展示会報告
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絵本を巡る旅 - リポート
プラハ・ミュンヘン・パリ
東欧・ボローニャ
リトアニア
イスタンブール
ベルギー
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プラハ・ミュンヘン・パリ -旅報告  

 すったもんだの末に、なんとかとれた遅い遅い夏休み。 ゆっくり羽を伸ばす・・という感じではありませんでしたが、お陰さまでこの数日間、充実した時間を過ごすことが出来ました。

もしも2〜3日しか休みがとれなかったら、近場の温泉にでも行こう、6日以上とれたら久しぶりに思いきって遠出
をしよう・・と企てていました。10月末、ぎりぎりになって半ば強引に仕事を終わらせ(終わらせたことにし…笑)、なんとか“遠出”を実現したのでした。

はっきりした予定が立てられなかったので、直前にエアチケットをブッキング。入手できたのはアエロフロート(ロシア航空)のモスクワ経由プラハ行き、帰国便はミュンヘンからの出発。 多分、モスクワでテロ事件が起きたために、キャンセルが出たのでしょう。さらにプラハは、この夏街を直撃した大洪水の影響で、例年よりも観光客が少なかったようなのです。

「こんな状況で出発しても大丈夫なの?」と友人に心配されましたが 、このチャンスを逃せばまたいつ行けるかも分からないので、あまり深刻には考えないことにしました。

そんな訳で、降って湧いたようなプラハ-ミュンヘンの旅。駆け足ではありましたが、可能な限り現地の絵本を見てきましたので、明日から少しずつ報告させていただきますね。

さてさて、新着本UPの準備に数日かかると思うのですが、その間には時差ボケも解消してくれることでしょう。現地でしこたま飲んだチェコビールの体内濃度も、少しは薄めないといけません。(笑)スローペースな再スタートですが、どうかお許しくださいね!



 

 

 
   

 やっぱり時差ボケでしょうか?変な時間に眠くなったり、おなかがすいたりします。向こうへ着いた時にはまったく感じなかったのに・・・私は万年時差ボケで、本当の時差なんてあんまり関係ないはずなんだけどな〜。

「チャペック兄弟、ヨゼフ・ラダ、トルンカ、パレチェック・・・」

 ロシアのテロ事件直後だったからなのか、出発便は1時間30分も遅れ、モスクワに到着したのは乗継ぎ便出発時刻の5分前(笑)。あわやトランジットホテルに幽閉か・・と思いきや、地上スタッフの「プラガー!!プラガー!!!」という叫び声に誘導され、10分でトランジット。なんとか予定通り、当日中にプラハ入りが出来ました。まったく、さい先のよいスタートです。(笑)

 プラハは物価の割にホテルが高いので、今回はキッチン付きのペンションを予約しました。(前日に・・) チェックインしたのは夜の9時頃、時差のお陰とは言え、日本を昼に出て当日の夜には着いているわけで、東欧もそんなに遠くはない印象でした。

 いつも旅先でホテルにチェックインした後、まっ先にやることは“買い出し”。 普通の食品店に行けば、現地の空気に早く馴染めるような気がするからです。ミネラルウォーターなどをぶらさげて、夜の道を歩きながら、ずーっと「なんだか外国に来た気がしない」と感じていました。それがプラハの第一印象。

 もちろん、歴史的な建築物が立ち並ぶプラハの街の景観は、 日本とはまったく違うのですが、どういう訳か何となく懐かしい感じがするのです。以前、ヨーロッパを巡り歩いた時の思い出が重なっているだけかも知れませんが、私にとってはなんとも心地よい第一印象でした。


旧市街の本屋さん(新本)

 プラハには言わずと知れた観光名所がたくさんありますが、そういうところにはほとんど足を伸ばさず、本屋とビアホールに多くの時間を費やしました。今回は、世界一おいしいといわれるチェコのビールに魅せられて店主Bが同行したので“ チェコのビールを堪能する”という、もう一つの目的があったのです。店主Aは絵本を、店主Bはビールを求めてプラハ行きを選んだのですが、考えてみると双方の目的と希望が完全に一致したのはこれが初めてのような気がします。

 翌日から私たちは、精力的に町中を歩き回りました。一日目はまず新本屋から・・・もうかなり前からチェコの絵本に興味があったので、日頃の運動不足などどこ吹く風、目に着く本屋を片っ端から見て廻りました。疲れたらビアホールでガソリン補給。(笑)「うまい!!うますぎる〜〜〜!」などと、チェコビールのおいしさにすっかり気をよくした店主Bは、気持ちよく購入した本の運び役を引き受けてくれたのでした。

 う〜〜、それにしても現地で目にするチェコ絵本の数々。やっぱり感動でした。
チャペック兄弟、ヨゼフ・ラダ、トルンカ、パレチェック・・・チェコ語はぜんぜんわからないけれど、絵を見てるだけでも十分幸せ。チェコの児童文化の奥深さを、初日から感じ取ることが出来ました。 ・・つづく

 

なぜか懐かしく感じる街

店主Bの目的地、ガソリンスタンド・・おっとまちがえ、ビアホール。

 

 

 

 


「ミレルのもぐらがいっぱい」

 プラハの大きな本屋さんは、新市街の目抜き通りに数件ありました。“大きい”といっても日本の大型書店にくらべれば蔵書数も少なめ。絵本の総数も、日本ほど多くはなさそうです。といって、決して少なくもないけれど・・

 日本で有名なチェコの絵本作家といえば、 多くの受賞歴があるパツォウスカー 、もぐらシリーズのズデネック・ミレル、パペットアニメでも有名なトルンカ、その他ユゼフ・ラダ、パレチェック・・絵本作家とはいえないかも知れませんが、チャペック兄弟の作品も魅力的ですね。まあ、数え上げたら切りがありませんけど、こんなところでしょうか。

 実際に現地で一番目にしたのは、やはりズデネック・ミレルのもぐら。このもぐらはチェコの国民的キャラクターなので、土産物屋でも食品店でも、とにかくそこかしこで目にします。アニメをそのまま絵本にしたものはタイトルも多く、お値段も他の絵本より少し高め。EU加盟を目指すチェコの経済振興に、少なからず貢献している感じです。

 どの本屋でも平積みされていたのはヨゼフ・ラダとチャペック兄弟の本。日本ではほとんどが絶版状態になっているヨゼフ・ラダですが、ご当地では“もっともチェコらしいイラストレーター”といわれ、非常に人気が高いようです。何冊か手にとりましたが、どういうわけか日本の翻訳本よりもずーっと魅力的に見えました。なんでだろう・・・

 「ダーシェンカ」などでお馴染みのカレル・チャペックは、チェコ国内だけでなく世界的に人気があるらしく、英語版も並んでいました。ちなみに今、神奈川県立近代美術館で、チャペック展をやっているので、時間がとれたら行ってみようかなーと考えています。 (ちょっと遠いなー)

 もちろんトルンカもいまだ健在。日本でも出版された「不思議な庭」の他、魅力的な絵本が何冊か店頭に並んでいました。

 一方、パツォウスカー の本はついに、新本屋では一冊も目にすることが出来ませんでした。古本屋でもやっと一冊見つかっただけ。これはちょっと意外・・さらに今回はパレチェックのあるタイトルを捜したのですが、ついに見つからずじまい。小さな本屋さんでは店主が名前すら知らない場合もありました。

 現在の注目作家は、どうやらピーター・シスのようです。1949年にチェコスロバキアで生まれ、アメリカに亡命したピーター・シスは、『星の使者 ガリレオ・ガリレイ』(原田勝訳、徳間書店、1997年)や『マドレンカ』(松田素子訳、BL出版、2001年)で、その芸術性を高く評価された実力派。この方の絵本は、美術館のミュージアムショップに置かれたり、ショップのショウウインドーに飾られたりと、児童書としての枠を越えて認められているようでした。ピーター・シスの本は日本でも出版されていますので、まだの方は是非。

 これは店主Bが気づいたことなのですが、チェコではほとんどコミックを見かけませんでした。まったくないということはないと思うのですが、本屋をぐるぐる歩いていても、目にとまりません。コミックが出版界の稼ぎ頭である日本とはずいぶん事情が違うようです。最後の日にちょっと立ち寄ったドイツのミュンヘンでは、日本ほどではないにしろ、かなりコミックが売られていました。それも日本のコミックが大半を占めています。ドラゴンボールやアキラ・・・日本のマンガはかなり人気が高そうです。本屋のイメージも絵本の総数も、お値段もドイツと日本はほとんど同じイメージでした。チェコとドイツはお隣同士なのに、やはりまったく違う国なんですね〜。



戦利品・・上の2冊がトルンカ、真ん中はパレチェック、一番右はミレル


ギャラリーのような本屋

本屋の看板
KNIHY=本

 

 

 

 お陰さまで、本日は6時に起床。なんとか時差ボケ克服か?
今日は新本屋さんで見つけた本を一部ご紹介しますね。これらの絵本はずべて現在チェコの本屋さんで売られているものです。とても可愛い絵本たちなので、なんとかもっとうまく皆さんにご紹介したいのですが、ネットだと限界がありますね。もうちょっとちゃんとお伝えできるといいのですが・・・

 向こうで買った本は、一部を除き郵便局から発送しました。送料を聞いて悩んだのですが、なんせ、本は重たい!一冊500グラム相当ですから、2冊で1キロ・・・あっという間に5キロ・・・です。店主Bがいくらガソリンを補給しても、限界がありました。ほんの少しですが、買い付けもしてきましたので、荷物が届いたら新着コーナーにUPしますね。

「チェコでみつけた絵本、一部紹介」

→『ふしぎな庭』
イージー・トゥルンカ(ほるぷ出版の表紙より)

右がほるぷ出版から発行された翻訳版、残念ながら絶版。中のレイアウトはほとんど同じ。

  
 
↓同じく イージー・トゥルンカの絵本。『DVAKRATSEDM POHADEK』(チェコ語の記号表記が出来ません)

  

 
↓もぐらシリーズで有名なミレルの絵本。アニメを絵本にしたものよりもカワイイと思う。

  


↓やっとみつけたヨゼフ・パレチェックの絵本。幸せや喜びを色で表わすことができる人。
  
   

 前回までは、現在本屋さんに並んでいる新しいチェコの絵本をご紹介しましたが(ほんとにざっとだけど)、今回は古本屋さんでの出来事をお伝えしますね。

「プラハの古本屋で」

 チェコでは“ANTIKVARAT”と書いてあるお店が古本屋さん。下調べして行くことはできなかったのですが(土壇場でそんなことできる訳もないけど・・・)、街をくるくる歩いていただけで、何軒かの“ANTIKVARAT”に出会うことが出来ました。ずーっと前に、カレル橋のふもとに絵本なども置いている古本屋さんがあるということを、何かの本で読んだことがあったので、曖昧な記憶を辿って訪ねてみたのですが、その区域は夏の洪水による被害が最も大きかったところで、ほとんどの建物の一階部分が工事中でした。

 復旧作業は急ピッチで進んでいますが、町中のそこかしこがまだ工事中で、洪水の被害が非常に深刻であったことを伺わせます。通りすがりの異邦人である私としては、せめて早期再建を祈るばかりでした。

 私がプラハで一番最初に出会ったANTIKVARATは、プラハ城に続く坂道の途中にある小さなお店(右の写真)。入り口を入ったすぐ右手に、白髪のおじいちゃんがちょこんと座っています。まずはちゃんとごあいさつ。店の中を自由に見てもいいか訊ねます。同じ古書店といっても、日本のルールがそのまま通じるとは限らないからです。ヨーロッパの古い街の古いお店(特に小さなお店)では、店頭にあるものはごく一部で、店主に自分が捜しているものを伝えると裏の倉庫からそれに見合ったものを出してきてくれる・・・というパターンが多いのです。(これはあくまで私の経験の範囲ですが)
 それからゆっくりと店内を見て廻るのですが、しばらくするとほとんどの場合「何かお捜しですかですか?」と店主が訊ねてきます。そこではっきりと自分の目的が伝えられたら、店主はそれなら・・と裏の倉庫に本を捜しに行ってくれるのです。この瞬間はいつもちょっとドキドキですが、言葉が片言であったとしても、誠実に伝えようとすれば、店主は必ず誠意を持って答えてくれます。新しく出来た古本屋さんでは、こんな暗黙のルールも失われつつあるようですが・・・
 
 私は、なんの気なしに自分が選んだ絵本の中の一冊を指差して、「私はこの絵本が一番気に入りました」とおじいちゃんに伝えました。
 するとおじいちゃんは「この本は私が小さかった頃に、一番のお気に入りだった。私の思い出に残っている一番最初の本だ。何度も何度もくり返し読んだよ」といって微笑みました。(おじちゃんは英語が話せます)その絵本はたまたま、おじいちゃんの
思い出の本だったのです。
 わたしはとっさに
 「この本を、私が買ってしまっていいのですか?」と訊ねました。
 するとおじいちゃんはゆっくりと首をふって
 「いいんだよ。いいんだよ。もうずーっと昔のことだからね」といいました。
  この本がおじいちゃん自身のものかどうかは訊ねませんでしたが、思い入れのある本であることには変わりありません。わたしははなんだかとても大切なものを譲り受けてしまったような気がして、おじいちゃんに何度もお礼をいいました。

 とても小さなお店なのに、店を出る時には2時間も経っていました。ANTIKVARATにいると、時間の流れ方が変わってしまうようです。

 ・・・この本に限っては、プレシャスの新着コーナーにUPされることはないと思います。けれど私がおばあちゃんになって、まだ何らかのかたちで古本屋をやっていたなら、誰かに譲ってもいいと思う時が来るかも知れません。
「この本は
ね、私が若い時に初めてプラハに行って、そこで出会った素敵な古本屋さんから譲ってもらったものなんだよ。店主のおじいちゃんが、子どもの頃に読んだ大切な本なんだ。・・・いいんだよ。いいんだよ。もうずーっと昔のことだからね」
 そんなことをいったりして、微笑む店主になれるでしょうか?
・・・・・・つづく


旧市街対岸の小さな古本屋さん


古本屋さんで見つけた絵本・・・というよりも店主が出会わせてくれた本たち。


おじいちゃんの思い出の絵本。
読めないのが残念・・・う〜ん
   

 

「いざミュンヘンへ」

 帰国便はチェコのお隣の国、ドイツのミュンヘン発。 プラハから鉄道でもバスでも約7時間の距離です。たまたまバスステーションに程近いアパートだったので、国際バス(ユーロバス)で国境越えをすることにしました。9時に出発したので、夕方の4時頃には到着するはずだったのですが、ところがどっこい、途中でまたしてもアクシデント発生。右回路の無い一本道で大型トラックと自家用車の衝突事故に遭遇。ほんの50メール先で事故車が道を塞いでしまいました。救急ヘリコプターやクレーン車、TV車までが出動する大事故で、なす術も無く立ち往生。近辺は畑と空が広がっているだけで、な〜んにもありません。
  ミュンヘンに関しては、ホテルも予約していなかったし、その日はドイツの祝日でツーリスト・インフォメーションも開いてないし、ガイドブックも持って無いし、第一自分が乗っているバスがミュンヘンのどの辺りに到着するのかも知らなかったので、なるべく早く現地入りしてホテルを捜したかったのですが、結局そこで3時間近くも足止めをくうはめになりました。(人身事故は大したことなかったみたいです)やれやれ。

 な〜んの目的も無く、な〜んにもない見知らぬ土地に、 ぽつねんと立っていると、“何で私はこんなところにいるんだろう”というふしぎな感覚にとらわれます。まあ、それはそれでなかなか得難い経験が出来たんですけれどね。

 ミュンヘンには15年前にも一度訪れたことがあるのですが、なんだかすごく開発されてしまってかなり街のイメージが変わってしまっていました。ドイツ南部で一番大きな街なのですから、当然といえば当然ですね。

 ほんの1日しか滞在しませんでしたが、大きな本屋を見てきましたので、また次回詳細をご報告します。

 

   

 チェコから送った荷物は船便指定なのですが、考えてみるとチェコってまったく海に接していませんよね。いったいどこをどうやって運ばれてくるのやら。船便の荷物は、通常1ヶ月以上、へたをすると2ヶ月以上もかかることがあります。でもチェコの場合はもっとかかるのかなー。送った時には、まったく考えてもみませんでした。島国の人間には、ちょっと理解しずらい感覚ですね。

「“ミュンヘンの本屋”と“とうふソーセージ”」

 自分が乗っているバスが街のどこに到着するかも知らない人間が、いったいどうやって宿を捜すかは容易に想像がつくと思うのですが、それでもなんとか中央駅の裏手に陽気なおじちゃんが経営している小さなホテル見つけて、チェックインすることが出来ました。バスがついた場所は無人のステーションで、インフォメーションはおろか両替所すらなく、メトロに乗るにも苦労する始末。まったく・・・ハハハハ・・

 残された一日は土曜日だったので、早起きをして街の中心部へ。ドイツでは週末になると普通のお店が、ほとんど正午か夕方までに閉店してしまう・・という記憶があったからです。なんせ一日しかありません、『本屋、本屋・・・』と足早に歩きます。ところが店主Bは、なにやら「とうふソーセージ・白いソーセージ」とぶつぶつ呟きながら歩いているのです。しかもハム屋を見ると吸い寄せられるように入っていってしまいます。

 店主Bによればミュンヘンには、午前中に作り立てを茹でて食べるという、名物の白いソセージがあるらしく、現地の人がそのソーセージには“正午の鐘を聞かすな”というほど、新鮮さが命なのだそうです。ちなみに“とうふソーセージ”というのはそのイメージから店主Bが勝手に付けた名前で、当然正式名称ではありません。(念ため)まるで呪文のように「とうふソーセージ・白いソーセージ」とつぶやくので、結局午前中から古いビアホールへと向かうことになりました。
 なんと、午前中だというのに店内は人でいっぱい。しかも、どのテーブルにも“とうふソーセージ ”とビールが! 食べてみると確かにおいしい 。フワフワな触感でさっぱり味、出来たてのの湯豆腐みたいです。
 もしも私が一人で旅をしていたら、とうふソーセージなんて決して味わえなかったと思います。いろんな寄り道をさせてくれた店主Bに感謝。目的の違う人と共に旅をするのも結構面白いかも知れません・・・でも店主Bはいったい何でこんなことを知っているのかしら?


 さて、ここからがやっと本題・・・ミュンヘンで一番大きな本屋さんは、仕掛け時計で有名な市庁舎のあるマリエン広場に面して建っています。 ビル全部が一つの本屋さん、日本でいうなら紀伊国屋か三省堂、といったところです。まずはここの児童書フロアを見て、ドイツの絵本をおおまかに把握しようと思いました。
 第一印象は『日本とそっくり』。規模も、蔵書数も、価格も、本のクオリーティーも、日本とほとんど一緒です。ただ、売り場がゆったりとつくってあって、あちらこちらにソファや椅子が置いてあり、子ども連れでもゆっくりと絵本を選べる感じ。
 平台にはエンデやプロイスラー、ヤーノシュなど、日本でもお馴染みの絵本が並んでいます。日本では通販でしか入手できないピクセル絵本も置いてありました。ざっと見た限りでは、日本の絵本は目に止まりません。これはチェコも同じでした。また、更にいうなら、お隣の国、チェコの絵本も目につくところにはありませんでした。
 実は、店内を廻ってもあまりドキドキしなかったのですが、それは日本でも翻訳出版されている本が多かったからかも知れません。
 
 もう一つ特筆すべきことがあるとすれば、この大きな本屋さんから歩いて2.3分のところ、Rosental 通りを入ったところにディスカウントの本屋さんがあるということ。出版流通システムの違う日本では考えられないことですが、新古本をかなりの割引率で売っているのです。もちろん、新本屋さんにくらべれば蔵書数はわずかですが、ここでお気に入りを見つけられたら、かなりお特です。私は何も買わなかったのですが、たくさんのお客さんでにぎわっていました。

店主Bが出会わせてくれた“とうふソーセージ・・・正式名はヴァイスヴルスト。特性の甘からしをつけて食べる

ミュンヘンの大きな本屋/Hugendubel

Hugendubelの児童書売り場(こちらはカールスプラッツにある支店の方で、本店よりすいてて買いやすい。

   

「最後の夜」

 最後の夜は、世界最大級の由緒正しきビアホール、HOFBRAUHAUSに行くことにしました。15年前にミュンヘンを訪れた時にも足を運んだ店です。その時に飲んだビールの美味しさを、その後もずーっと忘れられずにいました。ちなみに私の場合、日本のビールは「コップ1杯でもう十分、お腹一杯」なのですが、初めてHOFBRAUHAUSでビールを飲んだとき、気が付いたらジョッキ2杯を軽く空けていました。そのエピソードが“ミュンヘンのビールはおいしい”という事実とともに、今に至るまで仲間内でずっと語り草になっているのです。

 HOFBRAUHAUSはとにかく巨大。世界中から集まってきた人々と、地元の人々がみんな一緒になってジョッキを傾けています。相席なんて当たり前、よほどの大人数でもないかぎり、テーブルを独占することなんて出来ません。15年前にも、常連らしき地元の酔っ払いおじちゃんと意気投合し、結果的にジョッキ2杯を空けてしまったのでした。
 今回はというと、目の前に一人のおじさん。横におしゃべりに花が咲いている青年二人。初めはなんとなく所在なかったのですが、偶然おじさんのビールと私たちのビールが同時に運ばれてきたので、それがきっかけになって「かんぱ〜い!」ということになりました。

 場内はとにかくガヤガヤしているので、大声で話さないと会話になりません。相手がしゃべっているときは身を乗り出して耳を傾けます。おじさんは、ミュンヘンから30分の所に住んでいて、今日は本を買いに出てきたのだとのこと。私たちもビールと本を求めて旅をしているのだというと、あっという間に意気投合して、買ったばかりの本を見せ合いました。おじさんの戦利品は、ディスカウント本屋で買ったピカピカのギネスブック、私は数冊の絵本。

 話はどんどん盛り上がり、ふるさとのこと、家族のこと、天皇陛下!?のこと・・・いろんな話をした後におじさんは、家族の写真を見せてくれました。その写真はとても古ぼけていて、 若いころのおじさんが3〜4才くらいの男の子を抱いている姿が映っていました。
 「これはもう23年も前の写真なんだ。彼にはもう20年以上会っていない。私は離婚したんだ。」 と、たんたんと話すおじさん。
なんて言ったら分からなくて、ただただ写真を見つめてしまった私。

  金髪の小さな男の子が、黒いズボンと赤いシャツを着て、お父さんに抱かれています。 その姿を見ているうちに、あることに気が付きました。 私がその日に買った絵本の中の一冊に、その男の子そっくりの少年が主人公になっているものがあったのです。
  すかさずおじさんにその絵本を見せて指摘すると、おじさんは「本当だ!そっくりだ!」といって大喜び。年ごろ、黒いズボンと赤いシャツ、金髪・・・写真と絵本を比べてみると、まるで、おじさんの息子さんをモデルにしたみたいです。
  おじさんがしみじみとその絵本をめくっているので「その本、おじさんにあげるよ」と、プレゼントすることにしました。

  それから・・・ビール飲む飲む。しゃべるしゃべる。隣の青年二人、後から同席したおじさん一人も輪に加わって、気が付いたらまたもやジョッキ2杯+グラス1杯が空になっていました。記録更新です。(苦笑)
  「そろそろ行かなくては・・・」と先に席を立った私たちにおじさんは、 再び私たちがドイツを訪れたとき、必ず自分のふるさとを案内してくれると約束してくれ、住所を渡してくれたのでした。

  というわけで、私はまたドイツに行かなければなりません。(笑)通りすがりの出来事だし、本当におじさんに再会できるかも分からないけれど・・・それでも心の中にこういう出来事がずーっと残っていて、その思い出がまた私を旅に誘うのです。

翌朝、すったもんだで無事出国。これで今回の旅はおしまい。


世界一有名なビアホールHOFBRAUHAUS



続々と人が入って行く
酔っぱらってて
店内を写すの忘れた

仕方がないので15年前に
意気投合したおじちゃん
に登場してもらった
懐かしー
それにしても大きなジョッキ



注)私は決して
酒豪ではありません
ドイツやチェコのビールは
本当においしくて
たくさん飲めるのです
ハハハ

 

   
 

 
「おじちゃんたちが私を旅へといざなう

 いろんな国でいろんなおじちゃんに出会いました。ビアホールのよっぱらいだったり、すずめおじさんだったり、鐘楼の主だったり、ホテルのニコニコおじちゃんだったり・・・・
 別に私は、ハンサムな青年でもまったく構わないのだけれど、
なぜか“おじちゃん”との出会いが、思い出に残るエピソードになることが多いのです。

 もちろん、もちろん、老若男女いろんな人に出会うんですけどね。

 旅によって得られるものはたくさんあるけれど、時が経っても強く印象に残っているのは、やはり“人との出会い”です。あまり意識はしていませんが、私の場合その“未知なる出会い”に誘われて、また旅に出たくなるのかもしれません。

 以前読んだ角田光代さんの「恋愛旅人」という旅行エッセイに、こんな一節がありました。
最終章「幾人もの手が私をいくべき場所へと運ぶ」の最終ページです。

『たいした目的もなく、地図も持たず、交わす言葉も持たず、町を移動する東洋の旅人はひどく無力である。その無力さを自覚するとき、私はひとつのことを知る。世界は私が思っているよりもまともで、秩序だっている。
秩序だたせているのは人々の持っている無自覚の善的なものにほかならない。
 出会う人々の無自覚な善が、もし私をまったく違う場所へと運んできたとしても、おそらくたどり着いたその場所から、まったく同じものによって私はいつか目的地ーー目的のない目的だったとしてもーーへと運ばれていくのだろう。心細さや、やっていることの無意味さやばかばかしさに押しつぶされそうになりながらも私がもときたところへ引き返さないのは、そう信じているからに他ならなかった。』

 そしてこの本はこういう文章で結ばれています。

『この一枚の写真(彼女が旅先で撮った写真)を見たとき 、心もとなさと不安を抱え、人の持つ善的なものにすがるようにして見知らぬ場所を目指していたことを思い出せるように祈りながら。
 ・・・・・・・・・・・私は立ち上がり、再び無力な旅人として見知らぬ場所を目指す。』

 一人旅にとりつかれているのだという彼女の、 この文章には非常に共感します。考えてみると“無自覚な善”に出会わなかった旅は、これまでに一度もありませんでした。もちろん大変な目に会ったこともあるけれど、それを上回る“善”が、全てを結果オーライにしてくれるのです。

店主Bによる『ちょこっとパリ古本報告』  


 パリは、観光の中心であるセーヌ河沿いに小さなブキニスト(古本屋)がたくさん並んでいるせいか、“古本の街”というイメージがあります。 古本屋だけでなく、週末ともなれば街のあちらこちらで蚤の市が開かれるので、そういうところで古い本に出会うことも少なくありません。

 古本といっても、骨董的な価値のあるものから、いわゆる新古本とよばれるユースドブックまで、日本では全部ひっくるめてそういいますが、パリは日本と違ってその辺りのカテゴリー分けがしっかりとしています。 これはヨーロッパ全般に言えることです。

  以前このコラムでも触れましたが、100年以上たったものでなければ“アンティーク”とは呼びません。というより、呼んではいけないらしいです。
 アンティーク本を扱うお店は敷き居が高く、気楽に入れる雰囲気ではありませんし、買える価格帯でもありません。(笑)私たちの場合、こういう本はもっぱら美術館で鑑賞するに止め、まだアンティークとは呼べないけれど、30〜50年前に出版された古い絵本を捜します。

 由緒正しきアンティーク本を扱うお店以外に、パリではいろんなタイプの古本屋さんに出会います。セーヌ河沿いの小さなブキニストは、まるで露天のキオスクみたいな感じですし、日本でもよく見かけるような、新古本を売る店(写真下)もあります。同じようにCDやVIDEOも一緒に売っていますが、コミックが幅を聞かせていることはありません。日本は本当にコミック王国なんですね。日本のコミックはパリでもかなりの人気だそうで、何軒かの専門店もあるそうです。

 他に、週末にダウンタウンで開かれる古本市(写真上)があって、こちらは結構見ごたえがあります。 いろんな古本屋さんが本を持ち寄るので、新しいものから古いものまで、あらゆるカテゴリーの本を見ることができます。数軒ですが、児童書専門のブースもあります。
 ただ、値段はちょっと高め。・・“古いもの”に対する価値観の違いから、そう感じるだけかも知れませんけどね。
 
 フランスでちょっと苦労するのはやはり言葉です。フランスでは英語がほとんど通じません。若い人でも、英語を話せる人はかなり少ないみたいです。フランス語はあいさつと“美味しい!”くらいしか言えないはずなのに、何故か店主Aは古本屋のおじさんと談笑していたりします。テレパシーでも使っているのでしょうか?

>>>ちょっとだけ店主A登場・・・目撃証言!「私は見た!」

「古本市で、本を見ている間に店主Bとはぐれてしまいました。たいして大きな市でもないのに、いくら捜しても見つかりません。仕方なく通りに出てみると、そこで店主Bを発見!
 そこにはパン屋があり、 おばさんたちが焼き上がりのフランスパンを買うために列を作っていたのですが、そのおばさんたちに混じって、なんと店主Bがうれしそ〜に並んでいたのです!本よりフランスパンな店主B・・・だけどフランスパンも確かに美味しいよね。」


>>>店主B再登場・・・反撃!

「腹が減っては戦ができないんだよ!本は重いんだよ。」

>>>結果報告 店主A&B

「古本も素敵ですが、フランスパンがめちゃくちゃ美味しいです」