*たわごとコラム

シルエット絵本といえば・・・

シルエット絵本ほるぷ出版が1982年に発行した「複刻 世界の絵本館 ベルリン・コレクション」(*)の中に、“Neue Silhouetten-Fibel”というタイトルのシルエット絵本があります。→
タイトルの意味はまさに“新シルエット絵本”。
添付資料によると、1859年にブレスラフで発行された本で、
作者はFrohlich, Karl-カール・フレーリッヒ (1821-1898)
この方は、ドイツにおけるもっとも優れた切り絵作家といわれているそうです。

シルエット絵本2カール・フレーリッヒの作品
Titel: Schatten-Liliput. 1917

影絵や切り絵によるシルエット画は、18世紀後半、ヨーロッパで流行し
ドイツでは19世紀半ばまで、とくに横顔のシルエットが盛んに制作されたとのこと。
何につけ簡単、ローコスト、・・なのに美しい、というのが普及の理由だったようです。

中原淳一さんも、いつかどこかでこういった本たちを目にしたのでしょうか。
だとしたら、それらはとても異国情緒あふれる意匠として、中原さんの胸に焼き付いたに違いありません。
初めて手掛けた翻訳童話の挿し絵を「外国らしい雰囲気を出すために影絵で描いた」という氏の言葉からも、想像できます。

絵本に限らず、文化はこうして互いに影響しあって、変化し、それぞれに熟して独自の世界を築いていきます。そしてそれがまた他に影響を与え、新たな潮流を生み出してゆくのです。

自分が感動したものを作りだした人・・・その人を感動させ、影響を与えた人・・・
私はしばしば、そんなふうに作品を手繰り寄せて観賞します。すると、結局日本の作家や作品に辿り着くことも多く、それが自国の文化を見直すきっかけにもなりました。

この流れをミクロに考えれば、“感動して影響を受ける”ことの、くり返し・・・感動は創造の源なんですね。そう思うと、なるべく多くのものに出会いたいと、願わずにいられません。


*「ベルリン・コレクション」 
 1951年、ドイツ国立図書館に児童図書部門が設立され、第2次大戦で荒廃したヨーロッパ諸国の児童書を収集。現在では1945年以前に出版された古い児童書だけでも約3万8千点を所蔵。
 ほるぷ出版から1982年に発行された「複刻 世界の絵本館ベルリン・コレクション」では、ドイツ、フランス、ロシアなどの名作20点を復刻しています。所蔵している図書館も多いので、是非ご覧になってみてください。

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