*たわごとコラム

はじめての遠出

先週末、中学生のTくんが、たった一人で埼玉県から遠路はるばる訪ねてきてくれました。
以前は同じ市内に住んでいたので、ちょくちょく遊んでもらっていたのですが
こちらに引越してきてからは、なかなか会えなくなってしまいました。

Tくんによれば、一人で遠出をしたのは今回がはじめてとのこと。
自分で決断し、電車の時刻などを調べ、
しかも自分のお金で交通費を払って来てくれたのです。

迎えに来てほしいという連絡もなく、朝の9時半にピンポーンと玄関の呼び鈴が鳴って、
ドアを開けたら彼が立っていました。
5時半に起きて家を出てきたのだそうです。

たった一泊で、時間があっという間に過ぎてゆきましたが、
私たちにとっても思い出深い一日となりました。

私の“はじめての遠出”は、小学校6年生の時でした。
3才年下の弟と一緒に、電車を乗り継いで親戚の家に行った時のことを
今でもはっきりと覚えています。
新宿駅での乗り換えが一番の難関で、
出発直前まで母に乗るべき路線の場所を尋ねていました。

「上を見れば、ちゃんと書いてあるよ。」
「分からなくなったら、人に聞きなさい。」

母からのそんなアドバイスで心を奮い立たせて、
ドキドキしながら家を出ました。

途中、満員電車の中で弟が立ったまま居眠りをはじめてしまったり、
各駅と急行が分からなくなってしまったり・・・
あの頃は携帯電話もなく、移動中はドギマギしどうしでしたが、
それでも二人だけの力で、ちゃんと辿り着くことが出来ました。

それを切っ掛けに、どこへでも臆せず一人で出かけことができるようになりましたが、
“はじめての遠出”はやはり特別な思い出、
いつまでも色褪せることのない“宝物”です。

Tくんが、 初めて遠出の目的地にうちを選んでくれたので
私たちは“宝物”のお裾分けをいただくことが出来ました。

一緒に、ぶんぶん風が吹く海を見にいったことや
夜中までおしゃべりしたことは、
Tくんがくれた宝物です。

ありがとう。

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