*たわごとコラム

仲秋の名月 – その3

青い月、赤い月
眩しいほどに輝く月
今にも空に溶けてしまいそうな、薄ら氷のような月 ・・・

これまでにも様々な“思い出に残る月”がありました。

それでも、今年の仲秋の名月が、特に印象深く感じられたは、
水際で月の出の瞬間を見たからだと思います。

なににもまして、水面に映る月光が、息を飲むほどに神秘的だったのです。

月の光は、さざ波に揺れる光の道になり、
静かに私の足元へと伸びてきました。
それはまるで、月と自分が光の道で繋がっているような、
不思議な感覚でした。

当たり前のことですが、水面に映る光の道は、
常に見ている者の方へと伸びてきます。
水辺にいても、間に堤防や道路があったら、気付かないかもしれません。
文字通り、水際に立たなければ光は届かないのですから・・・

あの日は、月が空高く昇るまで浜にいました。
月の色も、空の色も刻々と変わってゆき、
帰る頃には、月明かりで風景が青白く光って、
何もかもがくっきりと影を落としていました。

仲秋の名月は、やはり特別な月。
これまで、この日にお月見をしなかったことが悔やまれます。

月にまつわる伝説や行事は、
古人のこんな体験から生まれたのかもしれませんね。
いつもは、空の彼方に、遠く月を望んでいるだけのかぐや姫も、
“特別な月”の日だったら、光の道を通り、
水の上を歩いてでも故郷に帰ることができただろうと思えるのです。

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