*たわごとコラム

・・・前回のつづき

そんなことをいっている私だって、
今使っている旅行カバンにはしっかりキャリーがついていますし、
昔と大差はないものの、結構“コギレイ”に旅をしています(苦笑)。
今となっては「お金がない分、体力でカバー」なんて事はとてもできません。
そして、今だからこそ分かることなのですが
当時と今とでは旅から得られるものがだいぶ違います。

個人的な意見ですが、若いうちにはやっぱりバックパック旅行がおすすめ。
もちろん、費用はアルバイトでもなんでもして自分で稼ぐべし。
リッチな旅やツアーは、年をとってからでもできるからね。

おしゃれな眼鏡にセロハンテープ

数年前にトルコ航空を利用した際、乗り継ぎの便が遅れて、
イスタンブールの空港内で何時間も待たされたことがありました。
仕方なく、待ち合いロビーのベンチに座っていると、目の前に
大学生くらいの日本人の男の子が二人連れでやってきました。
どうやら同じ境遇の人たち。

当然、大きな荷物はチェックインの時に預けてしまっていますので
誰もが小さな手荷物しか持っていないのですが
二人はどう見てもバックパッカーでした。
・・つまり、独特の雰囲気を放っていたのです。

待ち時間がかなり長かったこともあり、その子たちとなんとなく話し始めて、
結局、搭乗時間ぎりぎりまで、
ワクワクするような体験談を聞かせてもらうことができました。

二人とも、とにかく目がイキイキ!
旅の途中には、嫌な思いや危険な目にもたくさんあったようですが
それでも、 また必ず旅をすると言っていました。

今までにもいろんな旅人に巡り会いましたが、
この二人は特に、印象深く記憶に残っています。
それは、この二人のうちの一人の男の子が「人生が変わりました」
という話をしてくれたからなのです。

実を言うと、彼は一般的なバックパッカーと、ちょっと身なりが違っていました。
バックパッカーといえば、おおむね汚いジーンズに洗い晒しのTシャツ、
履き古したスニーカー・・といった出で立ち。
まあ、訪れる国や季節によっていろいろですが、
だいたい同じようなオーラを放っています。
ところがこの男の子は、、、なんていいますかね〜・・・
ファッショデザイン系の学校に通っている学生か、
はたまたそういう業界で働いているような感じの洋服を着ているのです。
ちょっと変わったデザインの眼鏡をかけて、細身のシャツを着ていました。
経験的にいうと、こういうスタイルで貧乏旅行をする人は珍しいのです。
ではどうして、一目でバックパッカーだと分かったというと、
要するにコキタナカッタんですよね。(笑)

おしゃれな眼鏡は柄が折れてしまっていて、
それをセロハンテープでグルグル巻きにして直していました。
きれいなシルエットのパンツも裾はボロボロ、
おまけに素足にヨレヨレのゴム草履を引っ掛けていました。

彼は、頻繁に傾いてしまうセロハンテープ付きのおしゃれな眼鏡を
直しながら話してくれました。
「ぼくは以前、持っているお金を全部洋服や靴に遣ってしまっていました。
とにかく、自分が着るもののためだけに、アルバイトをしていたんです。
でもこうして旅をしてみて、今まで何をしていたんだろうと思うようになりました。」

もしかしたら彼は、ファッション関係の仕事を目指していたのかもしれません。
だとしたら、旅で得たものは彼のセンスにさらに磨きをかけたはずです。

飛行機が遅れたお陰で、本当にいい話を聞くことができました。
思いがけず長〜い時間をくれた、トルコ航空にお礼を言いたいくらいです。(笑)

今でも時々、彼らはどうしているかな、と思い出します。
まだ旅を続けているでしょうか?
それとももう、ファッションデザイナーか何かになったでしょうか?
あるいは、まったく違う道を歩んでいるかもしれません。

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