*たわごとコラム

ただいまの机上絵本–「わたしは青なの」その2

ただいまの机上絵本–「わたしは青なの」—その2

絵本に限らず、音楽であれ映画であれ、心の奥底に響くような作品に出会うと、
作者がどういう人であるかということにとても興味が湧きます。

性別や国籍はもちろんのこと、
なにより“どんな生き方をした人なのか”ということに。

前回のコラムでご紹介した「わたしは生きてるさくらんぼ」についても、
同じ作者による作品を読んでみたいと思って探してみました。

この絵本に記されている作者名は“デルモア・シュワルツ”。
巻末に、彼が優れた評論家であり、短編小説家であり、詩人でもあるという簡単な作者紹介が掲載されています。(イラストを手掛けたバーバラ・クーニーに関しては、日本でも相当数の翻訳絵本が出版されています)

とりあえず作者名だけで他の作品を探してみましたが、収穫はゼロ。
けれども、評論家で短編小説家で詩人なら、児童書ではなくとも何らかの作品が出版されているはず、と枠を広げて調べてみることにしました。
結果、小説やエッセイなど、数はそれほど多くないもののいくつかの作品を発見。
翻訳されているものはほんの2.3点で、
児童書に関しては、原作からして1作品しかないことが分かりました。
ちなみに、代表作は、
In dreams begins responsibility 「夢で責任が始まる」
という短編小説で、村上春樹氏や、柴田元幸氏ら五人の翻訳者がお気に入りのストーリーを紹介するというスタイルで出版された『and Other Stories とっておきのアメリカ小説12篇』(文藝春秋、1988)というアンソロジーに収録されています。
 
一般的には「わたしは生きてるさくらんぼ」よりも、「夢で責任が始まる」の作者としてデルモア・シュワルツの名は知られているようで、彼のことを調べたければ、小説家、もしくは詩人としての軌跡を辿った方がよさそうです。 しかし、そうして得た情報のほとんどに「わたしは生きてるさくらんぼ」についての記載はなく、小説や詩から彼の名を知った人には、案外この絵本の存在は認知されていないのかもしれません。   
 ・・・・・つづく

PADE TOP