*たわごとコラム

メアリーと龍宮に行きました。

「メアリーと龍宮に行きました。」

おとぎ話の出だしみたいな言い方ですが、つい最近、私が実際に経験したことです。
メアリーはアメリカ人でした。
龍宮は・・・・ここ、熱海にありました。

ある夏の日、周辺の美術館でこの秋に予定されている企画展の情報を仕入れようと
駅近くの観光案内所に立ち寄りました。
ここには、伊豆半島一帯の観光パンフレットが揃っていて、
美術館の割引券なんかももらえます。

カウンター周りにずらーっと並んだパンフレットを物色していると
個人旅行客らしき外国人の女性がやってきて、
観光案内のおばさんに、簡単な英語で質問をし始めました。

「ホテルを探しています。大きな荷物を持っているので
駅の近くのホテルがいいのですが・・・」

「荷物預かりは、そこのロッカーしかないんです。
あのビルの中に、大きな荷物でも預かってくれるところがあります。」

・・・・意思の疎通が、まったくできていない様子。
その後も何やらちぐはぐな会話が続き、女性は渡されたメモを持って
カウンターを離れました。

このままだと間違いなくその女性は路頭に迷ってしまう・・・
そう思って、ついつい声をかけてしまった私。

彼女の要望は、なるべく安い駅近のホテルを紹介してほしいということでした。
予算を聞いてみると、一泊5000円。
う~ん、斜陽とはいえ一応観光地の熱海では、素泊まりでもこの値段はちと厳しい。

けれども、私自身バックパッカーだった(今でもほとんど変わらないけど)ので、
気持ちはよく分かります。
とにもかくにも観光案内所に戻って、そのまま条件を伝えてみることにしました。

しばらく待たされてようやく紹介してもらえたのが、
純和風旅館の龍宮○○、素泊まりで6000円。
「駅の近くで、これ以上安いところはありません。ビジネスホテルは空いてません。」
とのこと・・・
純和風というのは、外国の人にとってみれば魅力的かもしれないけど、
バスルームがシェアだったり、お布団だったり・・・
戸惑うことも多いかもしれないと思った私は
メアリーと名乗るその女性にどうするか聞いてみました。

すると、ジャパニーズスタイルでもまったくOKというので、
すぐに予約を入れてもらい、乗りかかった舟なので、
その旅館までメアリーを送っていくことにしたのでした。

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