*たわごとコラム

龍宮から戻ってきたら・・・

「龍宮から戻ってきたら・・・」

宿の人が、メアリーにチェックアウトの時間やお風呂の使い方を伝えてほしいというので、
私も部屋に上がらせてもらうことになりました。

入り口で靴をぬぐ、ベットはなくお布団を宿の人が敷いてくれる、お風呂はシェア、
浴衣はただで貸してくれる・・・・etc
こんなことは、他の国の宿ではあり得ないこと。
ただでさえ、ボキャブラリーが少ないのに説明するのも一苦労でしたが、
メアリーは、何を見てもまったく戸惑う様子を見せませんでした。
強いていうなら、幅の狭い急な階段や、間口の小さな入り口など、
日本サイズの設計に窮しているようでしたけど・・・

それにしてもこの宿、とにかく古い。
もちろん、古さが味わいになっている宿はたくさんあります。
けれどもこの宿の場合、味わいがあるだけではなくて、
修繕が必要?と思われる部分も、そのままにしてあったりします。(苦笑)
説明が難しいのですが、私にとっては
『日本にもこんな宿があるんだ~』という感じでした。

ふと、これまでに宿泊した、いろいろな街のいろいろな宿が脳裏に浮かびました。
安宿というのは、たいがい古くて、
それこそ種々多様な “味わい” が備わっているものです。(苦笑)
良い言い方をすると、その国らしさ、その街らしさが味わえるところが多いのです。

時間が来ると、宿泊客のほとんどがメッカに向かってお祈りを始める宿、
北の入り口からも、南の窓からも地平線が見える宿
お姉さんのようなお兄さんが営む海辺の宿・・
アットホームで快適な宿もありましたし、
留置場?みたいなイメージの宿もありました。(苦笑)

日本は基準が厳しいのか、私が泊まったことのある国内の宿は、
安くてもみな こぎれいでした。
古い宿でも、美観を保つために修繕や改築を繰り返しているところがほとんど。
開業時の建物をそのまま手を加えずに使っているところは少ないのではないでしょうか。
新しい建具は、宿のイメージを一律化してしまいます。
木造建築の場合、修繕や改築を繰り返すのは仕方ないことなのかもしれませんね。

龍宮○○も例外ではないと思いますが、手を加えた形跡が少なくて、
ここだけ時の流れが遅いような印象を受けました。
“何でも楽しめる感覚”があるなら、
間違いなく味わい深い思い出をつくれる宿だと思います。

何かあったら携帯に電話してね、と番号を渡してメアリーに別れを告げ、
外に出てみるともうあたりは夕闇に包まれていました。
そしてどういうわけか、忙しなく行き交う車や、強い照明のコンビニに、
なんとなく違和感を感じました。

・・・いつの間にこんなに時間が経ってしまったのだろう?
どこか別の国から帰ってきた時のような時差を感じ
それこそ浦島太郎のような心持ちで、そそくさと家路についたのでした。

ところで、私が浦島太郎なら、メアリーは亀?
で、宿で出迎えてくれたおばあちゃんは、まさか乙姫の化身???
な、わけないわね。 (笑)

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