*たわごとコラム

自由になれたんだね

寒いですね・・・
温暖な気候のこの辺りでも、 山の方はうっすら雪景色です。

最近、近所の老犬が二匹この世を去りました。
二匹とも外犬だったので、この寒さが引き金になったのかもしれません。
一匹は以前このコラムでご紹介したシロ、
もう一匹は、海の近くに住んでいたベイ。
クロッキーの散歩の途中、いつも声をかけていた顔見知り犬です。

姿が見えなくなって、予感はしていたのですが、
何日か経って、飼い主さんやご近所の方から知らされました。

シロは、一人暮らしのおばあちゃんの家で飼われていた犬です。
おばあちゃんは、自分は年寄りだから散歩には連れて行ってあげられないのだといって、
その分、つないでいる鎖を長くしていました。
クロッキーが通りかかると、シロはその鎖が足に絡まないようにガニ股に歩いて、
必ず門の近くまで 会いに来てくれました。

ベイは盲目の犬でした。
名前を呼ぶと、耳をピンと立て、一生懸命こちらの気配を感じ取ろうとしていました。
ベイがつながれていたのは、小屋も敷物もないコンクリート敷の駐車場で、
雨風をよけることもできず、いつも壁際で縮こまっていました。
目の見えないベイにとってみれば、見知らぬものは皆恐怖だったはず。
だから、通りかかった時はいつも遠巻きに静かに名前を呼んで
「ベイ、今日はいい天気だね」とか「寒いね」とか、
そんなふうに声をかけるだけでした。
それでも、最初は警戒心でワンワンほえていたベイが、
だんだん、耳をそばだてて私の声を受け止めてくれるようになりました。

・・・ いろんな運命の犬がいます。

人間と同じです。

側で見ていると、胸が痛むこともありましたが、
シロもベイも飼い主なりの愛情を受け、食べ物を貰い、そこそこ長生きしました。
幸せの尺度など、誰にも分かりません。
ましてや通りがかりの私に、とやかく言えるわけもありません。

ただ、空っぽになってしまった二匹の居場所で
「自由になれたんだね」って 、
それだけは、自然に言葉になってこぼれました。

二匹はもう、自分自身でどこにでも好きなところに行けます。
どんなに遠いところにでも。
あるいは、飼い主さんのところにでも。

シロ、ベイ、さようなら。
忘れないよ。

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