*たわごとコラム
ただいまの机上絵本 —「うたがみえる きこえるよ 」
原題は「 I see a song 」、初版は1973年で、エリック・カールの初期の頃の作品。
プレシャス・ブックスでは、"センス オブ ワンダー"のカテゴリーで紹介したい絵本です。
翻訳版のタイトルは、原題とちょっと違います。
原題をそのまま訳せば「うたがみえる」の部分だけになるはずですが、
その後に小さな文字で「きこえるよ」が続きます。
理屈では、うたは“きく”もので“みる”ものではありません。
でも、この絵本には見えないはずのうたが描かれていています。
絵は“みる”もので“きく”ものではありません。
でも、この絵本からは聞こえないはずのうたが聞こえてきます。
だから邦題は「うたがみえる きこえるよ 」になったのでしょう。
本を開くと・・・
最初に登場してくるバイオリニストは、モノクロで描かれています。
彼が演奏を始めると、その音楽には色がついていて多様に変幻します。
そして演奏が終わると、モノクロだったバイオリニスト自身がカラフルになっているのです。
何を感じるかは全て本を開いた人にゆだねられた文字のない絵本で、
エリック・カール自身が書いたあとがきによれば、
『ある子どもは宇宙の創造について語っているのだといい、
ある図書館員は「この本はなぜこんなにかなしいのですか」と問いかけてきました。この絵本は,音楽だけを描いているのではありません。・・・』とのこと。
『この絵本からどんな音楽が聞こえてくるかな?
』なんていう前置きも、
不要な概念を作ってしまうということですね。
これは、“絵本だからこそ”の作品といえると思います。
逆に言えば、絵本以外の方法では表現できない作品ということ。
それだけでも、名作と呼ぶにふさわしいのではないかと思うのです。
とにもかくにも、私の中では“殿堂入り”の一冊。
表紙を飾っておくだけでも、感覚が刺激されます。
見ているだけでもほら・・・元気になってくるでしょう?
表紙に描かれた顔は、なんとなく、この作品の命そのものというか、
エネルギーというか・・・精・・・のようにも見えるんです。
「うたがみえる きこえるよ 」という絵本の精・・・??
なんだか言葉ではうまく表現できません。
そもそも、理屈では説明できない作品なのです。
先日「生きているものの黄色やオレンジ色から元気をもらう」というコラムを書きましたが、
この絵本は全ての色が、間違いなく
“生きて”います。