*たわごとコラム

鰹節

昨年から我が家では、鰹節削り器で削り節を作るようになりました。

子どもの頃は、そんなことは当たり前だったのですが、
いつの頃からパック入りのものを使うようになって、
以降、鰹節削り器はお蔵入りになってしまいました。

昨年、店主Bが突然「昔のように鰹節を自分で削ろう」といい出し、
実家の義母に頼んで、しまい込んでいた鰹節削り器を譲ってもらったのです。

もうだいぶ長い間使っていなかったので、
歯を研いだり、金槌で歯の出方を調節したりしてメンテナンスをし、
「さて、あとは鰹節・・」と、いつものスーパーに買いに行きました。

ところが、棚に並んでいたのは端から端までパック入り!
小袋入り、大袋入りと、いろいろ種類はあったのですが、
結局、固まりのままの鰹節は売ってませんでした。
まさか鰹節が入手困難とは・・(苦笑)
現代では、鰹節といえばやっぱりパック入りなんですね。

かといって、近くに乾物屋さんもないし、
デパートもないし・・・(デパートにならあるかもと思ってしまうところが、また悲しい)
手に入れるまでに少し時間がかかってしまいました。

ようやく準備が整って、「どっちが前だっけ?」なんていいながら、
ちょっと儀式みたいな感じで削り始めました。
シュコ、シュコ・・・という懐かしい響き。
時々、小さな引き出しを開けて中を確認します。
その度に、何ともいえない新鮮な香り・・・

少しずつ昔の記憶が蘇ってきました。

削った面がツルツルと光って、きれいだな~と思いながら触ってみたこと。
魚がどうしてこんなに固くなるのだろうと不思議に思ったこと。
まるで木の削りかすみたいだと思ったこと。
時々引き出しを開けて、つまみ食いをしたこと。

そんな思い出も、隠し味になっているのでしょう。
その日から、お味噌汁もおひたしも、それまで以上のご馳走になりました。

「美味しい」って 、その時の味覚だけで感じるものではないんですね。

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