*たわごとコラム

27年目のソメイヨシノ

日曜日は引越作業の中休み。
この街に住み始めて恒例になった、陶芸家Mさん宅でのお花見です。
毎年思うのですが、自宅の庭でお花見が出来るなんて本当に贅沢。

今年も見事に咲いていました、苗木を植えてから27年目だというソメイヨシノ。
27年でこんなに育つのかと思うほどに威風堂堂とした大樹です。
ご夫婦が工房を建てたその年に植樹した3本のうちの1本で、
他の2本はうまく育たなかったのだとか。

「あとで分かったことなんだけどね。
ここは土地が荒れていてね、とても桜が育つような場所じゃなかったんだよ。
この樹は、よくぞここまで育ってくれたとつくづく思うよ」
と満開の桜を愛でるように見上げるMさん。

工房を建てたら、庭に桜を植えることがご夫婦の夢だったのだそうです。

この桜は、27年間毎年少しずつ少しずつ成長しながら、
この工房とそこで暮らすお二人を見守ってきました。
満開に咲く桜は、ご夫婦の人生そのものです。

今では毎春、この桜を見る為に人が集まってきます。
そしてみな口々に、その美しさをたたえるのです。

「まるでこの家の守り神ですね」というと
「本当にその通りだよ」とMさんは笑いました。

『“育む”とは、こういうことなのだなぁ』と思いながら、
Mさんが焼いた器で、奥様がつくった美味しい桜ご飯をいただいたのでした。

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