*たわごとコラム
荒井良二 スキマの国の美術館
少し前のことになるのですが、夏休みの終わりに
荒井良二さんの展覧会を見にいってきました。
原画を目にするのは初めてです。
作品はすべてガラスケースの向こうに
きれ~に陳列されていましたが、
荒井良二さんのパワーは、そんなところには
とても収まりきれないという感じでした。
国内外で数多くの受賞歴がある方ですが、
日本人として初めて「子どもの本のノーベル賞」と
いわれるアストリッド・リンドグレーン記念文学賞を
受賞して、その実力を全世界に知らしめました。
この賞は、優れた子どもの本の作者に贈られる世界最大の賞で、
『長くつ下のピッピ』で知られる童話作家、リンドグレーンを記念して
スウェーデン政府が創設したものです。
展示会場の一室で、授賞式の様子を撮影したビデオが流されていて、
それはそれは盛大な式典であることが伝わってきました。
受賞にあたり、彼の作品はこう評されました。
「斬新、大胆、気まぐれ、全く独自の発光力を持つ絵本画家である。彼の絵本は、子どもと大人に同時にアピールする温かさを発散し、茶目っ気のある喜びと奔放な自然さがある。絵の具は、彼の手を経て、あたかも音楽の流れのように常に新しいアドベンチャーへ飛び出し、子どもたちに自分で描かせ、語らせたがる。子どもたちにとって、描くこと自体が詩的で偽りのないストーリーアートである」
画材にも技法にもこだわらない、うまいとかへたとかいう領域にもおさまらない、
子供の絵のように天真爛漫で自由な作風・・・
捕われずに描くというのは、子供のようではありますが、
彼の作品が子供の絵と同じなのか、というとそうではありません。
誰にでも描けそうで、描けない。
大人になって、想像の源に純粋なパイプで繋がるということは、
そう容易いことではないはずです。
そんなことを頭で考えて手を動かしても、 考えるということそのものが、
“濁り”になってしまうのですから。
自由だからこそ、実は一番実力が露呈しやすく、
しかも評価が難しいの作風なのではないかと思うのです。
そう考えると、受賞した側はもちろんのこと、選考した側の感性にも深く感服します。
・・・とまあ、そんなことも、頭で考えるウンヌンカンヌン・・・
荒井さんの絵本を手にすると、
『そんなことは、どうでもいいかも』という気持ちになってきて、
気がつくと、ただただ面白くてページをめくっているのです。