*たわごとコラム

清水真砂子さんの言葉

新刊情報でも、写真でも、ニュースでも、
新聞を読んでいて“これは”と思った記事は、
すかさず切り抜いてストックしています。
時々整理するのですが、一番古いものはもう25年以上も前のもので、
すっかり変色してしまっています。
スクラップブックに貼って整理する程豆な性格でもないので、
もう一度読み直そうと思ってもその切り抜きを見つけるのが至難の技。
これからは、特に心に響いた記事は
備忘録としてこの“たわごと”コラムに書き留めておくことに決めました。

最近一番印象に残っているのは、先月朝日新聞に掲載された、
清水真砂子さんについての記事。
清水さんは「ゲド戦記」の翻訳を手掛けた児童文学の評論家です。
記事の内容は、清水さんが30年間勤めた大学の最終講義でお話しされたことを
紹介するものでした。

以下、記事より抜粋。

子どもの本に関わる人は、うんと大人で、うんと子どもでなくちゃいけない。
 清水さんはまず「ナルニア国物語」の翻訳で知られる故瀬田貞二さんの言葉を紹介した。・・・
 清水さんはいう。「子どもだから黄金時代なんてうそばっかり。子どもぐらい縛られて不自由な存在はない」。経済力がなく自由に移動もできない。閉じこめられた世界にいる、と。
 大人になれば、よろいを着ることを覚えるけれど、幼い子どもはよろいを持たず、素肌をヒリヒリさせている。はぐらかす術も持っていない。
 そんな子どもが本を読む。現実よりももっとえげつない大人がいて、もっとすてきな大人がいる。「こんなに世界って広いんだ」と感じ取ることができるという。
 すぐれた子どもの本は「大きくなるって楽しいことだよ。生きてごらん、大丈夫」と背中を押してくれるもの。「苦労してもなかなか幸福にならない主人公を応援したつもりで、人生の予行演習をやっていたのかもしれない」と、子ども時代の読書を振り返った。
  「毎日帰りたくなるような家庭を作るのは至難の業。でも、子どもはそんなにヤワじゃない。週に30分でもいい。『この親の子でよかった』と思えるような瞬間があればいい。」
 こども学科の卒業生の多くは幼稚園や保育園で働く。「現実には、求めても光を得られないことがあるかもしれない。それでも、「どうせ」と子どもに言わせてはいけない。言えば楽になるけれど、希望を放棄させるということは、最もモラルに反することと言葉を強めた。
 そして、こう締めくくった。「子どもの本がしてきたように、この人に出会えたから自暴自棄にならずにすんだと思わせる一人に、この世につなぎとめる一人になって。」

清水さんが推薦する、10代を生きのびるための本
・「ベーグル・チームの作戦」(E・L・カニグズバーグ)
・「十一歳の誕生日」(P・フォックス)
・「ゼバスチアンからの電話」(I・コルシュノフ)

そんな人に出会えたかな? そんな人になれたかな?

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