*たわごとコラム

もうすぐ紙の本が消える?

IpadやKindleが急速に普及し始めて、紙の本が消滅するという話題が増えました。

『いつかはそうなるかもしれないけど、それはまだずーっと先のことだ』と
ぼんやり思っていたのですが、
最近「5年以内に・・・」なんていう記事が新聞に載っていてびっくりしました。

「紙の本」は5年以内に消える? 米科学者が見通し示す

 電子書籍と携帯情報機器の普及にともない、伝統的な「紙の本」は今後5年以内に姿を消すだろう――。途上国の子どもたちにノート型パソコンを配布するプロジェクトを立ち上げた米科学者、ニコラス・ネグロポンテ氏がこのほど、CNNの番組で自説を紹介した。

ネグロポンテ氏はインタビューで、紙に印刷された本を人々に行き渡らせるのは困難だと主張。「アフリカで本を欲しがっている50万人の手に、本そのものを届けることはできない」と語った。

一方、同氏らのプロジェクト「ワン・ラップトップ・パー・チャイルド(OLPC=1人の子どもに1台のラップトップを)」では、「1台のパソコンに100冊の本を載せ、それを100台送れば、村には1万冊の本が届くことになる」という。

紙の本から電子書籍への移行は先進国より途上国でより速く進むというのが、同氏の見方だ。「携帯電話が、もともと電話のなかったカンボジアやウガンダで素早く普及したのと同じこと。米国には固定電話があったため普及が遅れた」と、同氏は説明する。

見出しを見た時には『いくらなんでも“5年以内”なんて』と感じたのですが、
本文を読んでみると、それなりに説得力があります。
ちなみにこんな意見もあって、こちらはかなり現実的です。

電子書籍は5年で本を追い越す?


 ソニーの電子書籍事業部社長スティーブ・ハーバー氏は、「5年以内にデジタルコンテンツの売り上げが物理コンテンツより多くなる」と考えている。音楽、写真のデジタル化と同じパターンが、書籍市場で起きているという。ソニーは、電子書籍市場は「引き返せない段階」を過ぎたと考えており、ハーバー氏は出版社にパラダイムシフトが起きていると説いている。

遅かれ早かれ、紙の本が減少する(あるいは消滅する?)という時代は、
確実にやってきそうです。
ただ、「全ての本が電子化するとすれば、それに伴って失われるものは少なくない」
と思っている人は、多いのではないでしょうか。
そしてそういう人程、この状況を憂慮しているのではないかと思います。

確かに、本を単に情報を運ぶ器だと考えるのであれば、素材が紙であろうと
デジタル機器であろうと、合理的であればよいわけですが、
紙の本には、それだけではない意義が存在します。

例えば絵本は、その内容に合わせて本の体裁を決めているようなものが多いのです。
大地の広がりを表すために横長のサイズになっていたり、
空の高さを表すために縦長のサイズになっていたります。
お話のあたたかみを伝えるためにアイボリーの紙が使われていたり、
登場するクマの手触りを伝えるために、
毛皮のような特殊素材が使われている本さえも存在します。
赤ちゃん用の本が、手のサイズを考えて小さく作られていたり、
汚れても大丈夫なように全ページがビニールコーティングされていたり、
厚紙で作られていたり・・・

とにかく紙の本には、その内容だけではなく、ブックデザインという部分にも
制作者の思いがいっぱい詰まっています。
つまり、オブジェクトとして仕様が、その内容をさらに深めているわけです。

子供と一緒に、あるいは自分一人で絵本を開く時のことをちょっと想像してみます。
デジタル絵本である場合と、紙の絵本である場合と・・・
たとえそれが同じ作品だったとしても、
味わえるものがかなり違ってくるのではないかと思うのです。

デジタル絵本には、デジタル絵本にしか表現できない世界があると思うので、
全否定しているわけではありません。
全ての本がデジタル化してしまうという状況を憂慮しているのです。

ただ、上記ののように、本をなかなか手にすることができない人たちのことを考えると、
どんなスタイルであれ、とにかく出会いの機会が増えることを祈らずにはいられません。
そして、身の回りに本があふれ、しかもあらゆる選択肢が許されている自分が、
どんなに恵まれているのかを思い知ります。
教育のこと、環境のこと、いろいろな側面から考えると、
どんなに本好きな私でも、一概にデジタル化に反対することはできません。

いずれにしても、この流れはもう誰にも変えられません。
いつか遠くない未来に、
「昔は、本はみんな紙でできてたもんだよ・・・」
なんていう時代がくるのでしょうか?

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