*たわごとコラム

タンポポもどきの咲く村

もうすぐ入梅。
来週末はもう雨模様かもしれないと思ったら、
家にいるのがなんとなくもったいなくなって、
ドライブがてら買い物に出ることにしました。

向かったのは、山中にある野菜市場。
付近の農家さんたちが作物を持ち寄って開いている直売所です。

うちからは、車でひたすら山道を走り続けて約15分。
海町を遠くに見下ろしながらくねくねの坂道を上り詰め、
連なる山々の景色を望みつつ峠を越えると、
『こんなところに?』というように突然人里が開けています。

直売所は、そこから更に森を一つ越えた先にあるのですが、
いつもこの村を通る時、ちょっと不思議な感覚を覚えるのです。

観光地でもないし、
おとぎ話に出てくるような、昔ながらの村というわけでもありません。
山の中腹に結構な広さの平らな土地が広がっていて、中央付近に畑と田んぼ、
それを取り囲むように普通の家が点在しています。
その畑と田んぼの真ん中に、おそらくこの村唯一のバス停があって、
小さな郵便局や、JAや、ガソリンスタンドがポツンと建っています。
その付近には、マーケットもコンビニも、個人商店すらありません。
いつ行っても人影が少なく、車もバイクもほとんど通っていないのです。

直売所を訪れるのは約2ヶ月ぶりなのですが、
この時期、この村の辺り一面に黄色い花が咲き乱れていて、
その風景がとても美しかったので、思わず車を停めました。

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一見、タンポポにそっくりなのですが、
柄の部分がとても長くて、花の高さが20~40cmもあります。
帰宅後に調べてみたら、豚菜(俗称ータンポポもどき)という帰化植物でした。
ちょっと意外な名前です。
ヨーロッパでは「ブタのサラダ」と呼ばれているらしく、それが和名の由来なんだとか。

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誰もいない野原で、さらさらとこの黄色い花が揺れていました。
高度の関係からか、この花が咲いているのはこの村の周辺だけなのです。

それにしても何なのでしょう、この不思議な感覚・・・
子供の頃の記憶が甦ったようでもあるし、
黒澤明監督の「夢」という映画を見たときの感覚にも似ています。

家から15分足らずの所なのに、とても遠くに来てしまったような感じ。
ここに来ると、ちょっと時間の感覚が狂うのです。

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