*たわごとコラム
シャボン玉
まだまだ梅雨は開けていませんが、
週末ともなると、海辺は夏休みを待ちきれない人たちで大にぎわいです。
久しぶりに晴れ間がのぞいた七夕の日、
浜に出てみると、波打ち際でシャボン玉を作っている女性がいました。
環になった糸をシャボン液に浸して、それを海から吹く風にさらすと
自然に大きなシャボン玉が出来ます。
風がふうわりと優しく吹いて、それをシャボン液が包み込む・・・
その女性は、多分妊婦さんで、
まるで祈りの捧げるみたいにそれをただ繰り返しているのです。
それは、なんだかとても美しい光景でした。
風が作り出す思わぬかたちの造形に驚きながら、
シャボン玉がどこまで遠く、高く飛んでゆけるか見届けたいと、
しばらくの間、夢見心地に見つめていました。
大人たちは誰もがそんなふうに、控えめに遠望しているのですが、
こどもたちはシャボン玉を見つけると走り寄って行って手を伸ばします。
そして、競う合うように次から次へと飛んでくるシャボン玉を
つぶして遊びます。
どういうわけか、どの子供も皆同じように
シャボン玉を追いかけて、つぶすことに夢中でした。
『何故だろう?』
ふと、不思議に思いました。
子供はどうして、無邪気にシャボン玉をつぶしたがるのだろう?
逆に、大人がそう出来ないのは、
それがどんなに儚いものかを知っているからかもしれません。
夢のように消えてしまうと分かっているその美しい瞬間を、
むやみにつぶすことは出来ません。
けれど、いずれにしてもシャボン玉は瞬く間に消えてしまう・・・
大きくても、小さくても、
つぶれても、つぶされても、
高く飛んでも、遠くに飛んでも、そんなことはおかまいなしに、
妊婦さんは海風と一緒に、
ただ淡々と、シャボン玉を生み出しておりました。