*たわごとコラム
やなせさん、ありがとうございました。
10月13日、やなせたかしさんが亡くなりました。
「アニメや絵本などで人気の「アンパンマン」のシリーズで知られる漫画家のやなせたかしさんが13日・・・」と、何度も各メディアで報じられていました。
「手のひらを太陽に」の作詞家だったということを伝えるメディアも多かったようです。
「アンパンマン」も「手のひらを太陽に」も、
日本人なら誰もが知っている国民的な作品ですが、
私にとって一番印象に残っているやなせさんの作品は、サンリオの詩集です。
やなせさんは、サンリオから刊行されていた雑誌『詩とメルヘン』の編集長を
長年(1973年から2003年)勤められていました。
多彩な方ですが、アンパンマンがヒットする前のこの時代は、
詩人としての印象の方が強かったのではないかと思います。
私も中学生の時に、「人間なんてさびしいね」というやなせさんの詩集を持っていました。
自分で買ったのか、いただいたものなのか、その辺は覚えていません。
ただ、そのタイトルがあまりにも印象的で、その後もずっと記憶に刻まれたまま
色あせることがありませんでした。
一度手放してしまったのですが、その後また古書店で出会い、
再び本棚に並んでいます。
「人間なんてさびしいね」
扉を開くと・・・
つぶやきのような、手書きの詩。
裏表紙にも・・・
やなせさんの詩は、当時 “メルヘン” と 表現されていた夢見がちな作品とは
一線を画していました。
生まれて、生きて・・・
いつか死ぬと分かっていても生きて、
飾ることのないありのまんまの心の底に、
まるで生まれる前から焼き付けられていたかのような終生不変の思いを、
ふと、つぶやくように言葉にしたような、そんな感じの詩なのです。
生きていると、嬉しいことだけじゃなく、悲しいことも苦しいこともいっぱいあるけれど、
そしていつかは、誰もが一人さみしく死んでゆくけれど、
それでも、生きているってすばらしいよ。
やなせさんの詩からは、そんなメッセージが伝わってくるのです。
「手のひらを太陽に」の歌詞も、そうですよね。
ぼくらはみんな 生きている
生きているから 歌うんだ
ぼくらはみんな 生きている
生きているから かなしいんだ・・・
誰もがそうであるように、やなせさんもたった一人で旅立ちました。
それでも、
いろいろあったけど、生き続けてよかった
生まれてよかった
そんな声が、この詩集を開くと尚更はっきり聞こえてくる気がします。
例えやなせさんの作品だとは知らなくても、たくさんの人の心の中に、
そのメッセージはしっかりと刻み込まれています。
やなせさん、ありがとうございました。