*たわごとコラム

「ガラスのジゼル(原題・Gisele de Verre)」

私が「Gisele de Verre」に初めて出会ったのは、ルーブル美術館の児童書売り場でした。
その児童書売り場は、奥の方でアート本の売り場と繋がっていて、
「Gisele de Verre」はちょうどその辺りに置いてありました。
カテゴリーとしては、“子どもの本とアート本の間”に
位置付けられていたのだと思います。

“絵本=子どもの本”という捉え方はおそらく世界共通のものですが、
よく考えてみるとなんの意味もない概念ですよね。
この、無意味だけれど世界中に深く浸透した概念が、
いったいどれほどの弊害を産んでいることか。
「もっと自由に絵本を捉えてもいい」という提言はもちろんこと、
「もっと自由に絵本を“制作”してもいい」はずなのです。

国際児童書展などで世界の絵本を見比べてみると、フランスはとりわけ
そのような概念を払拭する価値観が大きい国なのだと感じます。
フランスでは、絵本が表現手法の一つとして確立されており、
アート本との境界線はもはや存在しませんが
だからといって、そのような絵本を“大人のための絵本”などと
うたっていないところがまたいいのです。

「Gisele de Verre」には、絵本を広い視点で捉えようとする“フランス絵本”の独自性が
よく表われていると思います。テーマといい、タイトルといい、
アートワークといい、印刷製本といい、どの過程をとってみても、
質の高いセンスを感じます。
内容のみならず本のつくりも繊細な作品で、 実のところ翻訳本の制作は難関続きでした。
技術的な面だけでなく、それこそガラスのように繊細な作者の感性を
本という形に結実させるために注意深く制作が進められました。
編集工房くうさんの情熱には、本当に頭が下がります。

本というのは、作者一人では作り出せないもの。
よき本の出版には、関係者の情熱が不可欠なのだと、つくづく実感しました。

アレマーニャさんも、 きっと喜んでいることでしょう。
ガラスのジゼル

銀色の帯にも、アレマーニャさんのイラストが透かし絵のように印刷されています。

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