*たわごとコラム
Love & Free
旅行記を読むのが好きです。
旅のおみやげ話を聞くのも好きです。
「おみやげは何がいい?」と聞かれた時はいつも、
「モノはいらないから、帰ってきたらおみやげ話を聞かせて」と答えます。
同じ場所を訪れても、人によってまったく見え方が違うはずですし、
自分の一生だけで出会えるものはごく僅か。
だから、旅先での経験を聞かせてもらうことは、最高のおみやげです。
かなり前のことになりますが、本屋さんで偶然
「Love & Free」という旅行エッセイに出会いました。
ジョン・レノンの曲名みたいなタイトルが旅行記の棚ではちょっと異質で、
何となく手に取ったのです。
ザブタイトルは、「世界の路上に落ちていた言葉」。
著者が旅先で撮ったスナップ写真に、その時々に感じたことを
詩のような文章で書き添えてある写真エッセイで、
パラパラとページをめくってみると、
笑っている子供たちの写真が多い・・・
映っている人たちが自然な表情をしている・・・
第一印象で、この人がいい旅をしていることが伝わってきます。
前書きに「・・・約1年8ヶ月。結婚したばかりの妻とふたりで、気の向くままに世界数十ヶ国の路上を歩いた。・・・旅のコースも、期間も、特に決めなかった。・・・金がなくなったら帰ろう、それだけを決めて出発した。」とあります。
東南アジアの島で、モンゴルの砂漠で、シベリア鉄道の車中で、ヨーロッパの裏道で・・・
著者が見つけて拾い集めたものたちが、この一冊にぎゅっと圧縮パックされています。
それらは“モノ”ではありません。
例えば、「風」というページがあって、モンゴル遊牧民の男の子に
ハーモニカを貸したというエピソードが記されています。
「オマエが吹くのか?」って聞くと、彼は首を横に振った。
そして、彼はハーモニカを風にかざした。
ふぁ~~~ん、ふぁ~~~ん、ひゅふぁ~~~ん~~~~風がハーモニカを吹いていた。
強く弱く、細かいビブラートを懸けながら、
風は絶妙なトーンでハーモニカを吹いた。人間の口では絶対に出せない音...
ふたりでマザーテレサの活動を手伝ってみたり、カオサンロードをたゆたってみたり、
モンゴルの草原で星の歌を聴いてみたり。
きれいなだけじゃないこの世界の表や裏を、自らの足で歩んだ若き旅人のリアルな記録です。
著者と面識はありませんが、こんな本を手にすると、
思いがけず見知らぬ人から最高のおみやげをもらったような気になります。
ちなみに旅の終わりのページには、こんな言葉。
大切なことに気づく場所は、いつも、
パソコンの前ではなく、青空の下だった。
.....同感。
心にLove & Freeが足りなくなった時におすすめ。
紫陽花
近所にあじさい並木があって、ほぼ満開になっています。
この花は晴れた日よりも雨の日の方が美しく見えるんですね。
昨日通りがかりに、思わず見とれてしまいました。
晴れだろうが雨だろうがあじさいの美しさに変わりはないはずですが、
多分、雨で沈んだ風景の中でこの花の色が際立つのでしょうね。
それから、雨で沈んだ気持ちにも。
あじさいは漢字で“紫陽花”と書きますが、
まさに、薄暗闇に差す紫の陽光のように、そこだけ透明に明るく映ります。
日々変化する花色のグラデーションは、何度見てもはっとするような美しさ。
見慣れているはずの花なのに、何故か今年は今更ながらに感動しています。
昨日、しとしと雨が降り続いてようやく本格的な梅雨入りかと思ったら、今日は快晴。
太陽と紫陽花で、眩しすぎるほどの陽気です。
ちなみに、先日の新聞にこんな記事が載っていました。
http://www.yomiuri.co.jp/tabi/news/20060616tb01.htm
“夜のあじさい号”・・・乗ってみたい。
なんだか、違う世界に行ってしまいそうだけどね。
愛の詩
どうも最近小忙しくて、心の中が相当ちらかっておりました。
それで、今日は未読の詩集を手に取って、
どこともなくページを開くと、それは愛の詩でした。
その詩は、こんなふうに結ばれています。
「なんにもないのになにもかもある
それこそ私の最大の贈り物
それを私は愛と呼ぶのだ」
鍵カッコで囲まれたこの言葉は、いったい誰が発したものなのでしょう。
この詩にはこんなふうに記されています。
その誰かが誰かはいつまでも秘密
この詩に登場する“ふたり”は、その誰かからの贈り物を
受け取ることができるだけ。
お金で買えるものも買えないものも。
それらを、足し算したり、引き算したりして、
ふたりはやっと最大の贈り物にたどりつく・・・
この詩だけ読んで、この詩集を閉じました。
こんな詩を、一回にいくつも読むことはできません。
偶然か必然か・・・
今の私に必要なのは、“愛の詩”みたいです。
「ミストマントル・クロニクル」
「ミストマントル・クロニクル」 第1巻 ----- 流れ星のアーチン 第2巻 -----アーチンとハートの石 「ミストマントル・クロニクル」というファンタジーについて、この本の挿画を描いていらっしゃるイラストレーターの野見山響子さんからご案内をいただきました。 「ハリー・ポッター」 で一躍有名になった英国のブルームスベリー社による新作ファンタジーの邦訳で、カバーイラストを手掛けているのは、ドゥシャン・カーライ氏です。 内容紹介はこちら >> click! * 野見山響子さんからのメッセージ ---------------- 胸躍る、動物たちのファンタジーです。 物語はシンプルで明るいながら、ぞくぞくするような闇も抱えていて、カーライ氏の描く動物たちがぴたりとはまっています。 編集者の友人の画家さんが、スロヴァキアの大学でカーライ氏に 師事していたご縁で頼み込み、今回の装画の依頼が実ったとのこと。 ミステリアスで宝石のような、すてきな本です。 私は、本文カットを担当させていただいた駆け出しのイラストレーターです。 それまでカーライ氏を存じ上げず、このお話をいただいたときに 初めて画集を拝見したのですが、魔法で縫いとめられてしまったような あやしい生命感のあふれる絵にすっかり魅せられてしまいました。 今回のことは、光栄ながら、とても緊張するお仕事でした。 ドゥシャン・カーライ氏の絵を愛される方、 わくわくするような児童文学を読みたいと思われている方に。 少しでも多くの方にこの本を手にとっていただけたらと思います。 ------------------------------------------------------- 私もまだ手にしたばかりですが、装画といい、文章中のカットといい、 また、野見山さんからの紹介文といい、とにかく、期待感が膨らむ一方です。 それに、日本ではカーライ氏の作品がほとんど入手困難な状況にありますので、こういうかたちで氏の新作を目にできるのも、ファンにとってはうれしい限りですね。 |
タトル商会のお店が消えてしまったって、本当ですか?
タトル商会のお店が消えてしまったって、本当ですか?
最近神田に行っていないので、今の今まで知りませんでした。
タトル商会は、戦後から洋書の輸出入や翻訳権取引などを手がけてきた書籍商で、神田古本屋街のメイン通り沿いに、小さいながらも味のある直営店を構えていました。
時代の流れで、棚の雰囲気も随分と変わってきたけれど、いつだって、この街を歩くときは決して通り過ぎることのできない店の一つでした。
学生時代からよく足を運び、
限りある予算でどの本を買うか迷いながら、いつも長居をしていました。
銀座のイエナ洋書も消えてしまったし・・・
インターネットが普及して、洋書は随分と手に入りやすくなりました。
こういう店が消えてしまうのも、無理からぬことかもしれません。
確かに、本を買えるところは増えているかもしれないけれど、
“本に出会えるところ”は、減っているような気がします。
特に、“本を実際に手に取って見る”という出会い方のできる場所が・・・