*たわごとコラム

♪ 歌を忘れたカナリアは〜 ♪

「歌を忘れたカナリア」

日本人であればおそらく、おおかたの人がどこかで聞いたことのあるフレーズ。
童謡「かなりあ」(詩・西条八十)の歌詞の一節で、歌える人も多いと思います。

♪ 歌を忘れたカナリアは〜 ♪

私も、どこで習ったのかメロディを知っているのですが、
いざ歌ってみると一番しか思い出せませんでした。

♪ 歌を忘れたカナリアは~ ♪
♪ 後ろの山に棄てましょか ♪
♪ いえいえ それはかわいそう ♪

ここだけ歌っていると、なんだか悲しくて、残酷な歌です。
歌を忘れただけで山に棄ててしまうなんて。

改めて調べてみると4番までありました。
2番3番はさらに残酷です。

♪ 歌を忘れたカナリアは~ ♪
♪ 背戸の小薮に埋けましょか ♪
♪ いえいえ それはなりませぬ ♪

♪ 歌を忘れたカナリアは~ ♪
♪ 柳の鞭でぶちましょか ♪
♪ いえいえ それはかわいそう ♪

これは、最近「本当は怖い」と取りざたされている昔話や童話の類と同じなのでは?と勘違いしそうになりました。

この歌は4番に真意が込められていたのです。

♪ 歌を忘れたカナリアは象牙の舟に銀のかい ♪
♪ 月夜の海に浮かべれば 忘れた歌を思い出す ♪

4番まで聞いて初めて、この歌の意味の深さを知ることができます。
忘れていたとはいえ、なんとなくでも1番だけを繰り返し歌っているのは、
まさしく「歌を忘れたカナリア」と同じ。

あるべき場所に立ち帰れば、再び美しい歌を思い出すことができます。

久しぶりに4番を思い出し、優しい気持ちでこの歌を歌えるようになりました。
改めて、「歌を忘れたカナリア」の意味を考えながら。

♪ 歌を忘れたカナリアは~
♪ 後ろの山に棄てましょか
♪ いえいえ それはかわいそう

♪ 歌を忘れたカナリアは~
♪ 背戸の小薮に埋けましょか
♪ いえいえ それはなりませぬ

♪ 歌を忘れたカナリアは~
♪ 柳の鞭でぶちましょか
♪ いえいえ それはかわいそう

♪ 歌を忘れたカナリアは象牙の舟に銀のかい
♪ 月夜の海に浮かべれば 忘れた歌を思い出す

出会ってしまったんですよね、モロッコで。

「ヘタウマ」という表現は、いつ頃できたのでしょう。
私が子供の頃には、なかったような気がします。
調べてみると、ちゃんとWikipediaにも項目がありました。

「技巧の稚拙さ(つまり「ヘタ」)が、かえって個性や味(つまり「ウマい」)となっている様を指す言葉。」

さらに「明確な痕跡を残しておらず、誰が、いつ頃から、どういう必然性で、いかなる理論を基に生み出されたかは不分明である。」と記されています。

受け手の主観によるところが大きいため、明確な定義は存在しないそうですが、
確かに、何をもってして「ウマイ」といい、何をもってして「ヘタ」というのか、明確な基準などありません。
みんな「なんとなく」使っているのだと思うのですが、「ヘタウマ」という印象を受ける作品は、やっぱり何かが魅力的で心惹かれるものがあるんですよね。

昔、「ヘタウマ」にまつわるこんな手記を目にしたことがあります。

「『君はヘタな絵が本当にウマイねえ』と上司に褒められました。」

ヘタな絵がウマイ?・・・まあとにかく褒められたのですから、上司の方がその絵を魅力的に感じたのは確かなのだと思います。

絵本の分野にも、そういった作品が確かに存在します。
今となってはそういうタッチを意図して製作されているものがほとんどですから、少なくとも出版社を通して世に出ているものに、単に「ヘタ」な作品なんて存在しないはずですよね。

そう、Wikipediaの表現を借りて言えば、その作品が技巧的に稚拙に見えても、それが個性や味と認められたから出版に至ったのです。

私も、これまでに相当数の絵本を見てきましたが、全くその通りです。
現在は、昔よりもずっと個性や味と認められる範囲が広くなっていて、既成概念の枠を広げてくれるような作品が次々に生み出されています。
もはや、「ヘタ」とか「ウマイ」とか、さらには「ヘタウマ」なんていう表現すらも、そういう定義自体が稚拙なのでは、と思えるくらいです。

ところが・・・出会ってしまったんですよねモロッコで。

 

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「これ・・・もしかして『ヘタ』?」
「いや・・・このタッチを狙っているのかな・・・」
自分のセンサーに耳をすませてみても「ヘタウマ」という感想は聞こえてきません。

あるいは、文化の違いなのかもしれません。

いずれにしても、私はなんだかものすごく楽しい気持ちになって、この絵本を買うことにしました。
こんな絵本が出版されていることそのものが、その国の個性であり、味なのですから。

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