*たわごとコラム

闇に舞う光

実は私、ずーっと昔に小さなホタルを一匹見たことがあるだけで
たくさんのホタルが舞い飛ぶ光景を見たのは、初めてなのです。
子供の頃、近所でクワガタやおたまじゃくしを捕って遊んだ
思い出はあるのですが
ホタルがいたという記憶はありません。

中学生の頃、家の網戸に小さなホタルがやってきて、
母がまるで奇跡が起きたかのように驚いていたことを、
鮮明に覚えています。
家の周りはごく普通の住宅地で、
近くにきれいな沢があるような場所でもありませんでしたので、
それは本当に不思議な出来事でした。
家族全員で、まじまじとそのホタルを眺めていたのですが、
小さな光はとても儚げで
今にも消えてしまいそうでした。

昨夕見ることが出来たのは、小さな平家ホタルで
川岸の草むらにいくつもの光を灯していました。
草の上をホタルが歩くと、光がゆっくりと移動します。
その光が時折ふわりふわりと宙を舞って、
明滅しながら別の草むらへと飛んでいきます。

光を見るためには闇が必要ですが、
その闇も、とても印象的でした。
昨夜は曇り空で月明りも無く、辺りには民家もありません。
その場所は小高い山の谷間に流れる沢で、周辺の光は全く届きません。
車のライトを消して、持っていった懐中電灯を消してしまったら
ホタルの光以外、な〜んにも見えないのです。

ところが、耳にはいろんな音が飛び込んできて、とても賑やか・・・
真っ暗やみですが、静寂なわけではありません。
沢の音はもちろん、風の音や鳥の声、虫の羽音・・・
いろんな音がいつもよりくっきりとと聞こえる感じがしました。
ホタルを見るという目的が無ければ、
またその光が見えなければ・・・
ただただ怖いだけだったかも知れません。(苦笑)

思えば、こんな暗闇の経験も、
これまでに数える程しかないような気がします。

とにかく、昨夜はちょっとした冒険でした。
子供の頃の、迷いホタルのことを今でも鮮明に覚えているように
昨夕のことは、きっと一生の思い出になるだろうと思います。

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