*たわごとコラム

倒れた老松

いつになく外が騒がしいと思ったら、目の前の道路が大渋滞。
何事かと店主Bが偵察に行ったところ、
国道が通行止めになっていて、迂回してきた車が裏道に押し寄せてきているとのこと。
なんでも、海沿いの老松が突然倒れて道を塞いでしまったというのです。
幸いけが人は無かったようですが、国道135号は上りも下りも通行止めで、
てんやわんやの大騒ぎでした。

海岸沿いに立っていたその松は、樹齢400年。
コンクリートの岸壁とアスファルトの道路に挟まれて、
取り残されたように海を見渡していました。

近くで代々旅館を営むご老人の話しによれば、
開発の度に地元住民が松を切り倒すことに反対してきたのだそうです。
「その声が行政に届いて松が残されたのはいいけれど、その後はほったらかしで、
誰も面倒を見てやらなかった。
相当な歳なんだから、枝が重くなりすぎないように毎年剪定してやるとか、
虫を駆除してやるとか・・・なんにもしなかった。」

折れた松の幹は、中がスカスカだったそうです。

みんなで守ったはずの松。
人はその松を孤独にしました。
コンクリートやアスファルトで囲んで、いろんなものとのつながりを断ってしまいました。
地中で懸命に根を伸ばして自らつながりを作れるほど、松には力が残っていませんでした。

ちなみに、松の寿命は500年~千年とも言われているそうで、
山側にある同年代の松はイキイキしています。

“つながり” を断ってしまったら、命を救ったことにはならないのですね。

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