*たわごとコラム

ケーキ屋でキャパに遭遇

今日、気まぐれに入ったケーキ屋さんで、ロバート・キャパに遭遇しました。

路地裏にある小さくて目立たないケーキ屋さんなのですが、
創業が1947年 で、熱海では“知る人ぞ知る”的なお店なのだそうです。
(後で知ったことだけど・・・)
優しい物腰の老婦人がお店番をしていて、にこやかに応対してくれました。

ショーケースに並んでいるケーキは数種類、決して多くはありませんが、
どれもこれもおいしそう。
あれこれ迷って選んだケーキを包んでもらっている間、
ふと壁に目をやると、そこにロバート・キャパが撮ったサイン付きの写真が
掲げてありました。

被写体は、カウンターに座った女性とその奥で料理をするコック・・・
そのコックが、当時は仏蘭西料理のレストランを営んでいた
このケーキ屋さんのオーナーで、
当時からずっとお店番をしているというご婦人の旦那様。
90代となった今でも、現役なのだそうです。

この写真が撮影されたのは 1954年(昭和29年)だということなので、
キャパは、ベトナムで最期の時を 迎える直前、
日本に滞在していたということなんですね。
知りませんでした。

ちなみにこの写真は、とある有名な写真雑誌に掲載されたそうですが
事実とはまったく異なるキャプションがついていたそうです。
なんていったって、キャパが撮影しているその横で
一部始終を見ていた生き証人がいうのですから、間違いありません。

キャパがこの日、熱海で何をしていたかなんて、
どうでもいいことなのかもしれませんが、
こんなふうにゆがめられてしまった歴史はいったいどれぐらいあるのでしょうね。

それにしても、キャパはもう随分昔の人のような気がします。
彼が撮った写真も、かなり古びています。
けれども、その時を現実に生きて、今も尚同じ場所で店を営んでいる人が
目の前にいる・・・
それは、予期せずに小さなタイムワープをしてしまったような
ちょっと不思議な体験でした。

今日という日・・・ロバート・キャパについて思いを巡らせる日になるとは
思ってもみませんでした。

気まぐれに立ち寄ったケーキ屋で、タイムワープ。

寄り道は、してみるもんですね。

*ここでその写真を見ることができます。
http://www.alao.co.jp/RobertCapa/1954japan.html

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