*たわごとコラム

我が家の家宝

フィルム・カメラだった頃は、
スナップ写真といえども、今程気軽にシャッターを押すことはできませんでした。
なにせフィルム一本で撮影できる写真の枚数は、多くても36枚。
アルバムに並ぶのは、冠婚葬祭とか旅行とか、何かの記念日とか、
とにかく“特別な時”に撮影した写真がほとんどです。

デジタル・カメラの時代になってからは、枚数規制のたがが外れて
何にでも気軽にカメラを向けられるようになりました。
今では毎日のように、他愛のないものをあれこれ撮影しています。
被写体は種々雑多でとりとめがないのですが、
我が家の場合、特に多いのは犬、空、道ばたでみつけたもの・・・そして、食べ物。

食べ物を撮っているのはほとんどが店主Bで、
日々の食卓から外食した時の料理、飲んだお酒のラベルに至るまで、
とにかくこまめに記録しています。

特に “日々の食卓” に関しては、10年以上もの間ほぼ毎日毎食、
しかも、目玉焼きやお漬け物みたいなありきたりなメニューも外さず撮っているので、
すでにものすごい枚数になっています。

本人曰く、なんでそんなことを始めたのか、
今となっては動機すらも思い出せないとのこと。
目的があるわけでもなく、いつからかそれが習慣になってしまって、
毎回何も考えずにシャッターを切っているのだそうです。

専用ソフトで撮りためた写真をスルスル一覧できるようになると、
最初に目にとまるのは、やっぱり大きなイベントの時に撮影した写真です。
“日々の食卓” なんて、たくさんありすぎて、しかも毎日食べている普通のごはんだし、
一覧表示すると、不思議な模様の壁紙みたいに見えます。
一枚ずつよく見たって、それがいつのごはんだったのかも思い出せません。

だけど、たくさんの写真を流し見しているうちに、じわじわと気持ちが動き始めました。
「こんなにたくさん食べてきたんだな」
「今まで、こんなにいろんなものをつくってきたんだな」
「ずっとずっと続けてきたんだな」
これが“当たり前”のことだなんて・・・なんて恵まれているのだろう。

もしかするとこの写真は、我が家の“家宝”かもしれない・・・

少し前まで、不思議な模様の壁紙にしか見えなかった写真たちが、
急にかけがえのないものに思えてきました。

こんな写真、フォルム・カメラの時代には、決して撮ろうとは思わなかったはず。
まさにデジタル時代ならでは恩恵です。

今日もまた“家宝”が何枚か増えました。
例えお茶漬け一杯でも、家宝です。

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