*たわごとコラム
絵本に宿るもの
何故、これほどにもたくさんの人が”絵本の力”を信じているのでしょう。
大災害の直後のような非常事態においても、
人々の中に深くしみ込んだ”絵本の力”への信頼が薄れることはありませんでした。
その揺るぎない思いは、いったいどこから来るものなのでしょうか。
絵本を読み聞かせる時のふれあいがいいのだと言う人もいます。
子供の脳の発達に大きな効果があると言う人もいます。
確かに、絵本には様々な「効果」があるようです。
けれども、「効果」があるから・・・というな理屈っぽい理由で、
例えば災害の直後に、様々な絵本ムーブメントが起こったとは思えないのです。
言葉ではうまく表現できないけれど、
絵本には、文化や時代や性別や世代など、あらゆる違いを越えて、
理屈抜きに万人の心に寄り添う力がある・・・と私は感じています。
絵本は、大人が作るものです。
アート表現の一環として制作されることもありますが、
だいたいにおいて、制作者には『子供のために』という思いがあります。
まだ、人生の複雑さを知らない子供たちに、
かつて自らも子供だった大人が、伝えようとするもの・・・
世界の美しさや、教訓や、想像力を羽ばたかせるファンタジー等々。
子供が子供であるうちに、伝えておきたいと思うものを選りすぐり、
どうすればそれが、澱みなく伝わるかを考える。
考えているうちに、純粋なものに近づき同化してゆく。
その時点で既に、子供の心に寄り添っているのです。
絵本を作る人にも、それを伝えようとする人にも、
自然に、なにか善的なものが作用しているように思うのです。
それがとても根源的なものであるがゆえに、
思いが、あらゆるボーダーを越えて人の心に届くのでしょう。
優れた絵本には、純粋で善的な力が宿っています。
その力を、子供も大人も無意識のうちに感じ取っているのではないでしょうか。