*たわごとコラム

宝物が売れた—その1

先週末、数年ぶりに地元のフリーマーケットに参加してきました。

 

第一の目的はもちろん家の中の不用品を整理することなのですが、

毎回色々な出会いや発見があって、いい思い出にもなるので、我が家では数年に一度の恒例行事になっています。

 

今回は叔母の友人からの委託品がありました。

 

c1611-18

 

『手鞠』というのでしょうか、私が子供だった頃近所のおばあさんが作っていたので、

久しぶりに目にして懐かしさを覚えました。

当時は今よりもずっと作り手が多かったのではないかと思います。

 

とにかく、作ることそのものが楽しくて続けているので、作品が増えてしまって困る・・・・ということでした。

もちろん商売にする気もないし、捨てるのも勿体無いからフリーマーケットで売って欲しいというのです。

 

当日は朝一番からこの『手鞠』を見て、たくさんの方が足を止めてくださいました。

「懐かしい」という人。

思い出話を聞かせてくれた人。

「今はものすごく高く売られている」と教えてくれた人。

作り方を教えてくれた人・・・・

 

一番印象的だったのは、値引き交渉もせずに一つ買ってくれた青年でした。

年齢的には20代前半といったところ・・・何かものづくりをやっていそうなアーティスト風のオーラを放っていました。

 

青年はものすごく興奮した様子で一つ一つの作品を眺め回し、

「わ~、これどうやってつくるんですか??」

「中に何が入っているんですか??」

「この模様はどうやって出すんですか??」

「これ、正式名は何て言うんですか??」

矢継ぎ早に質問が飛んできます。

けれども、私が作ったわけではないので子供の頃の記憶をたどっても曖昧な返答しかできません。

そこにちょうどやってきた年配の女性が、その質問の全てに答えてくださいました。

後で聞いた話によると、昔作っていらっしゃったことがあるのだそうです。

 

青年は目をキラキラさせてその女性の話を聞いていました。

私にとっては昔懐かしい『手鞠』でも、その青年にとっては初めて目にするもので、

しかも何かものすごく感性を刺激するものがあったのでしょう。

彼は家に帰ってこの『手鞠』について調べ、そして新しい作品を生み出すかもしれません。

そんなエネルギーが強く伝わってきました。

 

大げさな言い方かもしれませんが、その光景には日本の未来への「希望」のようなものが見えました。

こんな風に、日本の失われつつある「佳きもの」が、次の世代へと伝わってゆけばいいのに・・・

と、ふと感じたのです。

 

何はともあれ、預かったものを、すごく良いかたちで受け渡しすることができたと思っています。

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