*たわごとコラム

だいだい色ってどんな色?

「だいだい色」は、子供の頃に持っていた色鉛筆のセットに入っていました。
だから私にとって、「だいだい色」といえばその色鉛筆の色のことで、
そもそも「だいだい」が何を示すものなのか、考えたこともありませんでした。
しばらくして、「だいだい」が柑橘類の一種らしいことを知りました。
けれども、食べたこともなかったし、おそらく手にしたこともありませんでした。

数年前に越してきたここ伊豆半島は、柑橘類の名産地。
「だいだい」の木もたくさんあります。

「だいだい」は漢字で書くと「橙」、英語で「ビターオレンジ」。
酸味と苦味が強いので、そのまま食べることはありません。
利用方法は、お正月飾りに使うか、ポン酢にするか・・・
砂糖をいっぱい使ってマーマレードにするぐらい。

やっぱり日本では「だいだい」よりも
「みかん」の方がポピュラーなのではないでしょうか。
なのにどうして、色鉛筆セットに入っているのは
「みかん色」ではなくて「だいだい色」なのでしょう?
もちろん「オレンジ色」でもいいけれど、
みかんなら、冬になれば大抵誰でも手に取って見ることができますし、
やっぱり日本独自の色名の方がいいような気がします。
第一、「みかん色」なんてすごく可愛らしい名前だと思うのです・・・

といっても、橙とみかんとオレンジでは色味がちょっと違うのです。
要は、「赤と黄の間の色」のお話なんですけどね。
そもそも、赤青黄緑紫白黒など、主要な色には
その色そのものの名前があるのに、何故、赤と黄の間の色には
ものの例えの名前しかないのでしょうね。
赤50%+黄50%の色名がないのです。

この家の東側に、大きな2本のだいだいの木が立っています。
春に花をつけ、夏に濃い緑の実をつけて、
この季節一斉に色づき、寒々しい景色に彩りを添えています。

たわわに実ったそのだいだいの木を眺めながら、
とりとめもなく考えていました。

子供の頃、何も知らずに使っていた「だいだい色」の色鉛筆・・・
今は、はっきり分かります。
オレンジでもみかんでもない、酸っぱくてちょっと苦い「だいだい」の色が。

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ぐりとぐらのカステラ

今話題の芦田愛菜ちゃんと鈴木福くんがあまりにもかわいいので、
お正月に一挙放送していた「マルモのおきて」というドラマを録画して
ぜ~んぶ観てしまいました。

二人ともまだ10歳にも満たないというのに、すでに大女優、名俳優の風格・・・
何から何まで感心することばかりです。

ところで、このドラマのエンディング近くに、
二人が、生き別れになったお母さんからプレゼントを贈られるシーンがあって、
ある有名な絵本がお話に使われているんです。

大きなかごに入れられて二人の元に届けられたのは、
フライパンで焼かれた、ふんわり黄色いカステラでした。
かごから出てきた、フライパン付きのカステラを見て
二人は目を丸くして叫びます。
「これっ・・・!」

・・・とその前に私が叫んでました。(笑)
「ぐりとぐらのカステラだ!」

その後、福君が全く同じセルフを復唱。(笑)

そうなんです、お母さんからのプレゼントは、
中川 李枝子さんと大村 百合子さんによる名作絵本
「ぐりとぐら」に登場するあのカステラだったのです。
親子でこの絵本を読んだ思い出がある、という設定だったんですね。

私も、遠い遠い昔、まだ小さな子供だった頃にこの絵本を開き、
確かにぐりとぐらと一緒に森へ出かけ、たくさんの動物たちと一緒に
カステラを食べたのです。
森に漂う甘い香り、ふんわり焼けた黄色いカステラのおいしかったこと・・・

この記憶は、実体験の記憶にも勝るとも劣らないリアリティーをもって、
あれから数十年たった今でも鮮やかに甦ってくるのです。

ドラマの中に出てきたカステラを一目見た瞬間に、
甘い香りが実際にぷ~んと漂ってきたくらいです。

この絵本は、もちろん今でも版を重ねています。
というよりも、日本で一番人気のある絵本、ですよね。

同じ思い出を持つ人が、きっとたくさんいることでしょう。
年代は違っても、みんなあの森でぐりとぐらのカステラをほうばった仲間です。

そう思うと、全国に幼なじみがたくさんいるような、楽しい気持ちになるのです。

絵本に宿るもの

何故、これほどにもたくさんの人が”絵本の力”を信じているのでしょう。

大災害の直後のような非常事態においても、
人々の中に深くしみ込んだ”絵本の力”への信頼が薄れることはありませんでした。
その揺るぎない思いは、いったいどこから来るものなのでしょうか。

絵本を読み聞かせる時のふれあいがいいのだと言う人もいます。
子供の脳の発達に大きな効果があると言う人もいます。
確かに、絵本には様々な「効果」があるようです。

けれども、「効果」があるから・・・というな理屈っぽい理由で、
例えば災害の直後に、様々な絵本ムーブメントが起こったとは思えないのです。

言葉ではうまく表現できないけれど、
絵本には、文化や時代や性別や世代など、あらゆる違いを越えて、
理屈抜きに万人の心に寄り添う力がある・・・と私は感じています。

絵本は、大人が作るものです。
アート表現の一環として制作されることもありますが、
だいたいにおいて、制作者には『子供のために』という思いがあります。

まだ、人生の複雑さを知らない子供たちに、
かつて自らも子供だった大人が、伝えようとするもの・・・
世界の美しさや、教訓や、想像力を羽ばたかせるファンタジー等々。

子供が子供であるうちに、伝えておきたいと思うものを選りすぐり、
どうすればそれが、澱みなく伝わるかを考える。
考えているうちに、純粋なものに近づき同化してゆく。
その時点で既に、子供の心に寄り添っているのです。

絵本を作る人にも、それを伝えようとする人にも、
自然に、なにか善的なものが作用しているように思うのです。
それがとても根源的なものであるがゆえに、
思いが、あらゆるボーダーを越えて人の心に届くのでしょう。

優れた絵本には、純粋で善的な力が宿っています。
その力を、子供も大人も無意識のうちに感じ取っているのではないでしょうか。

“絵本の力”を携えて

いよいよ、本日から更新スタートです。
新年一冊目のチョイスは「クシュラの奇跡」。
重い障害を抱えた少女クシュラが、絵本の読み聞かせによって、
奇跡な変化を遂げてゆくという成長記録です。

昨年春、日本は未曾有の大災害に見舞われました。
直後プレシャス・ブックスは、約一ヶ月間運営を休止しました。
『今は絵本どころではない』と、当時の私は強く思ってしまっていたのです。

ところが、間もなく日本中で「被災地の子供たちに絵本を送ろう」という
大きなムーブメントが起こりました。

必需品である食料や医療、医薬品とともに、
たくさんの絵本が現地に送られたのです。

“絵本の力”を、たくさんの人が感じている・・・あるいは信じている。
そうでなければ、こんなムーブメントが起こるはずがありません。

この出来事を切っ掛けに絵本が持つ可能性を再認識した私は、
戸惑いながらも、このサイトを再始動させることができました。

今年も、大なり小なりいろんなことが起こるでしょうが、
“絵本の力”を携えて、ゆっくりと確実に歩んでゆきたいと思っています。

本年も、どうぞよろしくお願い致します。

あけまして、おめでとうございます。

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今年の初日の出です。
平和な一年になりますように。

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